イヤーマフの中で２ (ページ13)

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黒と青のプレゼントページ13

Aside

『あの時、』

『ごめんなさいって言って、ごめんなさい、』

『ずっと、3年間ずっと、』

『会いたかったです。』

初めて会った時みたいに、またゆっくり手話を見せた。今言わないともうダメだって自分の反応がそう言ったから。

阿部さんは驚いたような、嬉しそうな笑顔を手話を忘れたからか、考えるそぶりをして

「僕も。」

「もう離れるの嫌です。」

「手話を忘れたのも、あのいつものカフェに、6時に毎週行けなかったのも、すごく辛かった。」

「ずっと、Aさんの声が聞こえてくる感じがして。」

「あの日、あった日から」

「Aさんのことが、大好きです。」

その瞬間、ぶわっと涙が溢れ出る。

今まで隠していた何かが、全部彼に吸い込まれたみたいで。

3年間の空白も、すぐに幸せな思い出に満たされる。

『本当に？』

「嘘だったら、わざわざこんなところまで来ないでしょ笑」

その瞬間、柔らかな唇が私の唇に触れた。
　

私が阿部さんに心を全て開いた瞬間。

　

前までなら絶対に突き放していたはずなのに。

「ちょー恥ずかしい笑」

阿部さんは耳を真っ赤にして微笑んだ。

それから彼はいつのまにか持っていた紙袋から何かを取り出した。

『いやー、まふ？』

指文字で伝えると忘れかけていたからか？を浮かべた。

『いやーまふ？』

口を動かしてなんとか伝えると、「あー！」と納得した模様。

『あってる。イヤーマフ。』

取り出したイヤーマフはアイボリー色。

「つけてもいい？」

「いいよ」

阿部さんの持つイヤーマフが私の耳に触れる。
冬の真っ只中だから耳が冷たい。

「よしっ」

「これで俺もつけちゃえば」

阿部さんは黒色。流石に緑はなかったらしい。

「俺も耳が聞こえないから、」

「同じ。」

　

「Aさんだけ聞こえないの理不尽でしょ？だから少しだけでも、同じでいたい。変な人かもしれないけど笑」

『そっか。笑同じ、か。』

「ずっと同じだから。ずっと。」

そしてまた私たちはイヤーマフをしたまま、キスをした。