イヤーマフの中で２ (ページ1)

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考え方の壁ページ1

目黒side

『好きです。Aさんのことが。』

優しくAさんを抱きしめた。

彼女は何も言わないで、俺の目を見た。

ふわっとした笑顔から苦しそうな顔に変わって、俺の体から静かに離れた。

辛そうに俯いて、ぱっとこちらに向かって顔をあげた。

振られるのは分かっていたけれど、想像以上に自分の心がギュッとなって、苦しくなった。

「ごめんなさい。」

「私、耳、聞こえないから、笑」
そういって、彼女は自分の耳を触った。

「もう決めているんです。誰とも付き合わないって。」

「付き合ってもただ自分が辛くなるだけなの、知ってるから笑」

『そ、っか。』

『じゃあ、阿部ちゃんはどうなんですか、』

辛かった自分にも、それだけは聞けた。
阿部ちゃんとなら、彼女が幸せになる、って思ってたから。

「阿部さんもです。付き合ったって、私障害持ちだから。彼の荷物になるだけで、何にもいい事ない。」

『そんなことないのに、「ごめんなさい」』

「私、こんな考えしかできないんです、自分勝手で、相手のこと何も考えていない考え方しか。」

「目黒さんにはもっといい人がいますよ。私なんかじゃなくて、もっといい考え方の人。好きって言ってくれてすごく嬉しかったけれど、やっぱり私じゃ駄目です。」

『っ、それでも、まだ友達でいてくれますか？』

「もちろんです。目黒さんと話しているの、楽しいから。笑」

『じゃあ、良かった、笑』

そうやってあの時は言ったけれど、

彼女の考えにまだ全然納得していない自分もいて。

本当は、『Aさんは特別なんかじゃない』って言ってあげたかった。