川魚の王子様 2【桃色】

feat.59 ページ11

「もうやだ…」


広いし、長いし、怖すぎて歩くスピードが遅くなって、さらに時間がかかる。


それに…


「なんか、嫌だ」


入った瞬間から思っていたこと。


気配を感じる。


「やっぱ感じる？」


と、モトキくん。


「昔さ、心霊スポットとか行って肝試ししたじゃん。その時から思ってたんだけど、Aってそういうタイプなのかなって」


「目覚めちゃったのかもね」


はっきり、いるとは言えないけど、気配があるんだもん。


周りを見ても、モトキくん以外の人はいない。


「かなりの数いるんじゃない？入った時から言ってるよね」


「そこまではわからないけど…数なのか、ずっと付いてきてるのか」


感じるのに見えないから、怖い。


「もう出る？」


モトキくんの指さした場所には、"緊急出口"の文字。


「うっ…リタイアはしたくない」


勇気出して入ったのに。


「じゃあ、危険を感じたら言ってね。その時はすぐ出る」


「ありがとう」


その後も、気配はあった。


後でお祓いにでも行こうかな。


「はぁ…やっと出口」


外に出ると、明るすぎて目が痛い。


「涙出てる」


泣いてるつもりはなかったんだけど…。


「大丈夫？体調悪いとかない？」


心配そうに、私の顔を見る。


「今のところ大丈夫。後でお祓いに行こうと思ってるけど」


「俺も行く」


怖かった。もちろん、お化け屋敷自体怖かったけど。


「今はどう？気配は」


「なくなったよ」


霊のこととかわかんないけど、人に憑くことはできないのか、地縛霊とかそんな類のものなのか。


「とりあえず、今は忘れて。ご飯食べよ!!」


モトキくんが差し出した手を握り、私たちはフードコートを目指した。

feat.60→←feat.58

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す