*虹 ページ7
.
「Aっ…」
その瞬間、また勢いよく噴水が上がった。
そして彼女の姿は見えなくなった。
俺はとっさに噴水の向こう側へ走った。
もう手放さないように。
もう後悔しないように。
走った先には、彼女がいた。
変わったけれど、変わらない彼女の姿があった。
『ナイスキャッチだったね?』
Aはそう言って笑った。
懐かしい笑顔。
そして俺の大好きな笑顔。
途端、胸から十数年分もの気持ちがこみ上げてきた。
「俺っ、Aが…」
緊張気味な俺と相対して、
彼女は穏やかな表情をして言葉を待っていた。
.
.
「俺、Aのことが…
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『「好き」』
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二つの声が重なった。
そうして彼女は幸せそうに笑った。
俺はそんな彼女の目を見つめ、その手をとった。
「あの時は言えなかったけど、
これからはちゃんと言葉にするから。
大好きだよ、A。」
『うん。優太、大好きだったよ。ずっと、ずっと、これからも。』
俺は掴んだAの手をもう離さないように、
ぎゅっと握りしめた。
『ねぇ優太、あれ見て?』
彼女が向いた方向を見ると、
大きな虹が弧を描くように、空にかかっていた。
それはようやく俺の言葉が届いた瞬間の出来事だった。
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end.
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Mother(プロフ) - かれんさん» ありがとうございます!進行中の作品も完結まで、ぜひお付き合いいただけたら嬉しいです。 (2020年6月1日 22時) (レス) id: 5a43b70246 (このIDを非表示/違反報告)
かれん(プロフ) - 今作もとても面白かったです! (2020年6月1日 1時) (レス) id: 840cdd8333 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Mother | 作成日時:2020年5月14日 16時