*赤い風船 ページ6
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それから5分ほど経ったら雨はすぐに止んだ。
俺はコンビニを出て、再び歩みを進める。
そして噴水のある公園にたどり着いた。
そこは人がちらほら見えて、ある親子連れの人がいた。
子供は赤い風船を持っていて、両親の間に挟まれている。
俺もいつかあんな風になれんのかな。
そんなことを思いながらその光景を見ていた。
すると、子供が親の間をするっと抜け
こちらへ向かって走り出してきた。
その瞬間、真っ赤な風船はその子の手から離れ、
ふわっとその空に向かった。
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あの時、素直に言えたら。
そう思う場面は数え切れないほどあった。
チャンスはいくらでも転がっていたはずだった。
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彼女にただ“好き”と伝える。
それだけだった。
それだけで、俺らは変われたはずだった。
でも、俺はことごとくチャンスを逃し、
言わなくていい言葉ばかりを口にし、
結局Aに言いたかったことは何一つ言えなかった。
そしてAは俺の前からいなくなった。
俺はそれから、どんなものでも手放さないように
必死にしがみついた。
もう、こんな後悔はしたくない。
その思いが今の自分を変えてくれた。
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俺は走って、その風船の紐を必死で追いかけた。
そうして、ふわふわと飛んでいく風船は、
その動きを一瞬止めた。
手には紐の感触。
「お兄ちゃん、ありがとう!!!」
「ちゃんと手、離さないようにな?」
俺はしゃがんでその子に風船を手渡し
頭をポンポンと頭を撫でると、
再び歩き出そうと、立ち上がった。
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その時だった。
『優太っ…!!!』
それまで勢いよく上がっていた噴水が、
その力を弱め、代わりにその声が聞こえた。
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それはいつもの聞き間違いかと思った。
けれど振り向くと、噴水の向こう側には
Aがいた。
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Mother(プロフ) - かれんさん» ありがとうございます!進行中の作品も完結まで、ぜひお付き合いいただけたら嬉しいです。 (2020年6月1日 22時) (レス) id: 5a43b70246 (このIDを非表示/違反報告)
かれん(プロフ) - 今作もとても面白かったです! (2020年6月1日 1時) (レス) id: 840cdd8333 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Mother | 作成日時:2020年5月14日 16時