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Aside
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“俺も…好きですよ”
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帰り道、
彼が口にした言葉が頭から離れなかった。
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ううん、それだけじゃない。
今まで見せてくれた表情やかけてくれた言葉、
ささいな仕草さえも、頭の中にフラッシュバックしてくる。
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この気持ちはなんだろう。
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嘘、本当は気づいている。
でも気づかないフリをさせて。
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「ママ、このはな、きれいだね」
両手で大事そうに一本の花とぬいぐるみを抱える空が優しく笑った。
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『そうだね、ありがとう、空』
花を愛でることのできる息子の成長に心が震える。
空がこんな風になったのも、
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きっと岸くんがいたから。
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「ねぇ、ママはきしくんのことすき?」
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『えっ、…ど、どうして…?』
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彼が発した無邪気な質問にとっさに反応することができなかった。
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それは「好き」という言葉の定義の問題。
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「ぼくは、きしくんといるときのママがすきだよ。
ママ、たのしそうだもん」
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どんなに隠したって、
こんなに小さな子にも、“好き”という想いは
見抜かれてしまう、情けない私。
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まだまだ純粋な彼はその“好き”の意味をよく知らない。
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『そうね、そうかもしれないね…。
でもね、一番大切なのは空だからね』
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私はもう振り向かないと誓って、
空の小さな頭を優しく撫でた。
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作者名:Mother | 作成日時:2020年4月3日 21時