季節外れの理由 ページ16
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俺たちはびしょ濡れのまま、車の中へ入った。
もちろん体を拭くものは無く、びしょ濡れのまま家へ帰った。
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次の日は予定がなかったので、自分の家に彼女を泊めることにした。
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その夜、二人でベッドで寝ている時、彼女は窓の外を眺めていた。
『まだ雨の音するね。』
ベランダの手すりに当たった雨が、不規則にリズムを刻んでいた。
「あーあ、雨ってだけでテンション下がるなぁ…」
『優太はとことん雨男だもんね』
Aはふふっと笑った。
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「でも初デートの時は晴れだったよね」
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彼女は何も答えなかった。
けれどしばらくすると、スースーという寝息が聞こえてきた。
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「…えっ、寝てるし。まあいいか…おやすみ。」
彼女のおでこにキスを落とし、
彼女の手をぎゅっと握りしめ、眠った。
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そこは満天の星空だった。
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寒くも無く、暑くも無く、でも懐かしいような感じがした。
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隣を見ると、Aがいた。
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彼女は幼く笑っていた。
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もう一度空を眺めると、流れ星が流れていた。
でも3回お願い事を唱える前に、消えてしまった。
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『優太のお願い事は？』
彼女が訊いた。
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「願い事…そりゃ、グループの世界進出とか、もっと色んなお仕事の機会もほしいし、
できればもっと頭良くなって、色んなこと考えられる人間になりたいし…」
言い切れないほどたくさんの願いがあった。
彼女は笑ったまま、うんうん、と頷いた。
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「でも、今の願いは…Aと一緒に生きること。」
彼女の方を向くと、彼女は手のひらを差し出した。
俺はその手を握った。自分よりもはるかに小さな手だった。
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「ううん…今だけじゃなく、永遠にね。」
付け足すと、彼女はわかった、という風にぎゅっと手を握り返した。
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そうして、空をもう一度眺めた。
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それは初デートで行った時の星空によく似ていた。
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fin.
終わり
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作者名：Mother | 作成日時：2020年3月31日 21時
