季節外れの理由 ページ14
.
「そういえばさ、なんでこんな時期に海行きたいって思ったの？」
.
お昼を食べ終わったあたりから、雲行きが怪しくなって、
空はどんよりとしていた。きっと俺が雨男なせいだ。
俺の人生は、大事な日に決まって雨だった。
でも、せっかく来たんだからと、Aは防波堤の上に登って歩きだした。
俺は不安になりながら、彼女の数十センチ後ろをついていった。
もちろん二人とも傘なんて持っていなかった。
.
『なんでかって？うーん、そうだなー…
優太と一緒に行きたかったから、かな。』
「…？別にどこだって俺は一緒に行くけど…？」
俺には彼女の言っている意味がよくわからなかった。
どこへ行くにも、俺は一緒に行く。
だってそうじゃなきゃデートなんて言わないはずだから。
.
.
『岸くんとはデートに行きたくなかったの。』
空を覆った雲はたくさんの水を含んで
地面にポツポツと染みをつくりはじめた。
Aは寂しい顔をした。
.
.
「えっ…？それは、どういう…？」
俺にはますますよくわからなかった。
.
『ほらっ…みんなが行くようなところ行ったら、
“優太”が“岸くん”になっちゃうでしょ？変装なんかもして…。
でも、今は優太は優太のまんま。
私は優太とこんな風にデートしたかった。』
Aは振り返って、帽子もマスクもメガネもしていない俺の頬に両手を添えた。
.
.
.
『でも、もう終わりだね…。じゃ、帰ろっか。』
彼女は俺の顔にかかった雫を拭い取ると、
しおれたように俯いた。
.
雨はだんだんと激しくなっていた。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 95人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：Mother | 作成日時：2020年3月31日 21時
