○04 ページ5
面接で既にお話したけど、バイト先の居酒屋の店長さんは、私をホールにしたかったらしい。
店長の中丸雄一さん。柔らかい雰囲気の人。
中丸「美人な子はホール行って欲しいんだけどね、まあ向き不向きあるし、一緒にがんばろうね。」
「すみません…でもおっきい声出します!頑張ります」
田中「気合十分じゃん。」
田中くんは私の頭をポンッと叩く。
田中くんはホールらしい。
高校生の頃からバイトしてたんだって。
店長の中丸さんと田中くんのお兄さんがお友達なんだとか。
中丸「まあ、うちそんなに客層悪くないから慣れたらホールでもいいかも。
キッチンもオーダー持っていくことはあるから卓番は覚えて。」
「はい!」
いよいよって感じで緊張する、いつも慎太郎の後ろにいた私が接客なんて……と思いながら
田中「Aちゃんバイト探してんの?うち来ない?ちょうど求人出しててさー」
という声かけがあって即面接、即採用。
「……よしっ」
「最初はドリンクからかな。ドリンクはほんとに待たせられないから。ドリンカー、基本は1人だからね。
今は研修だから私も横ついてるし、わかんないことあったら聞いてね。とりあえずグラスがどれかとお酒の種類……お酒わかる?」
「まだ未成年で……」
「あーそっか。まあラベル書いてるからオーダー入ったら都度教えるね。今日は暇だし。」
先輩の伝えてくれたことのメモをとる。
「もし、酔っぱらいが絡んできた時はすぐ呼ぶこと。」
優しい先輩もいるし、頑張ろう……!
・
「ねえねえ、松村くん?だよね?」
松村「そうですけど……なんですか?」
Aと慎太郎とは別の授業。
黒髪ロングの女が話しかけてきた。
顔を合わせると髪を耳にかける仕草をしながら
「私、七草千種(ななくさちぐさ)。松村くんのことかっこいいなぁって思ってて……良かったらご飯でもどうかなって。」
「なんで?」と言いたかったけど、今日はAはバイトで。
俺の知らないところにいるんだ。
……気の、迷いだった。
松村「……別に今日ならいいけど。」
寂しさをまぎらわせたかった、ただそれだけ。
663人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:冬村 | 作成日時:2023年6月26日 15時