夜桜の木の下には彼女がいた６～FFI編～ (ページ23)

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そしてその日の夜、Aは人気のない砂浜に向かっていた。

潮風に頬を撫でられながら砂浜を歩いていると、目線の先には約束通りフィディオが待っていた。

フィディオの横顔は試合に負けた悔しさと悲しみの入り交じった瞳だった。

だがAはそれを見た時、綺麗だとも思ってしまった。

フィディオの横顔に見惚れていると、フィディオがAに気付いた。

フィ「A、ありがとう来てくれて……」

『来るに決まってるでしょ』

Aはフィディオの隣に立って海を眺めた。

フィ「……俺、負けちゃったよ」

『うん、知ってる……残念だったな』

フィ「残念なんてものじゃないよっ……俺達のサッカーが何一つ通じなかったんだっ」

『そうだよね、ごめん……』

Aが申し訳なさそうにそう言うとフィディオはハッとして冷静になった。

フィ「ごめん……君に愚痴をこぼすために呼んだわけじゃないんだ……」

『それじゃあ一体何の用があって？』

その瞬間、フィディオはAを力強く抱きしめた。Aは一瞬驚いたが、フィディオの震える手を見てジッとすることに。

フィ「ただこうしたかった……慰めの言葉も何もいらない。

今は、君とこうしていたい……」

Aはフィディオの頭を優しく撫でた。

フィディオは静かに涙を流していた。