夜桜の木の下には彼女がいた２～FFI編～ (ページ15)

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６５．ページ15

その翌日の練習を終えた後の夜。

Aが部屋の中で本を読んでいると、窓の外に豪炎寺と豪炎寺の家の家政婦のフクが話をしていた。

Aは気になって足音を立てず玄関まで来た。

豪「俺は、サッカーがやりたいだけだった。昨日までは……」

『は？』

豪「でも、決めたんだ」

フ「決めた？」

豪「あぁ……今日決意したんだ……」

豪炎寺はそう言って黙り込んだ。

豪「……フクさん、いつも洗濯ありがとう」

フ「修也さん……」

そう言ってフクは帰っていった。

豪炎寺も部屋に戻ろうと振り返った時、目の前にはAが立っていた。

豪「！居たのか、A」

『……何を、決意したって言うの？』

Aは真っ直ぐに豪炎寺を見た。豪炎寺もまたAを真っ直ぐに見つめた。

豪「……何でもない。俺はお前達を必ず世界に連れて行ってやる」

そう言って豪炎寺はAの横を通り過ぎようとした。

しかしAは豪炎寺の腕を掴みそれを阻止した。

豪「A？」

『……行かないでよ。ずっとここにいてよ』

豪「！」

Aはそう言うと豪炎寺にそっと抱きついた。その声は少しだけ震えていた。

『(私の力じゃ、豪炎寺を止める事なんてできないんだろうけど……それでも私はっ)』

豪「A、お前……泣いてるのか？」

豪炎寺がAの頬に手を添え顔を覗き込む。Aの目は涙ぐんでいた。

その時、豪炎寺はAに上を向かせると、抱き寄せキスを落とした。

『！』

唇が離れると、Aは少し驚いた顔で豪炎寺を見る。豪炎寺は切なげな笑顔で笑うと、何も言わずに部屋に戻っていった。

豪「(すまないA……だが、もう決めたことなんだ……)」

『こんなことで、誤魔化してんじゃねーよっ……』