甘い:I ページ27
酔いつぶれたAを迎えに行った夜から2日たち、俺はAと並んでデートに至っている。
なんでこんなことになっているかと言えば、成り行きは簡単で、酔いつぶれたAを迎えに行ったお詫びに、好物のタピオカでも奢ってくれと理由をこじつけて、休日を満喫しようとしていたAを連れ出したのだ。
Aは二つ返事で快諾してくれたので、適当に駅前に繰り出してきた。
デートプランはなにもない。
それに、奢らせるつもりなんて、本当はこれっぽっちもない。こうでも言わないと、Aをうまく誘う自信がなかっただけだ。
タピオカを買うとなった時、案の定Aは奢るつもりで財布を取り出したが、もちろん止めた。
あぁ、Aを呼び出した理由が消えてしまった。どうやってこの先誤魔化そうか。
………なんてね。
正直、なんでもいい。
タピオカを奢ってもらう、というのが、ただの口実だってバレてしまったって、どうでもいい。
だって、少なくとも俺の気持ちは、もうAにはバレているんだから。
まだ、想いを告げていないだけ。Aに意識してもらうには、バレてしまうくらいがむしろちょうどいいのかもしれない。
俺ってもしかして、結構肉食系だったのかも。
隣のAは、ガチガチに緊張している。
店員さんから受け取った商品の、アイスティーのほうを、Aの目の前に差し出した。
驚かせるつもりはないので、ちゃんと一声かけて。
だと言うのにAは、いっそ大げさなくらいに肩を揺らして驚いた。
アイスティーを受け取る時に俺の指先にほんの少し触れて、それだけで思いっきり動揺してアイスティーを落としそうにもなった。
Aは、俺に緊張してる。
それが明らかに感じられて、俺はどうしても嬉しくなってしまう。
だって、俺を意識しているってことでしょ?
俺は、脈アリだって、思ってもいいでしょ?
俺が笑いかけるたびに、Aは困ったような顔をして、唇をキュッと引き結んで、息を吸い込んで、そして目をそらす。
A、気づいてる?
それ、恋してる顔だよ。
好きなやつ以外にそんな顔向けちゃ、ダメなんだよ。
だから、他の男にはしちゃダメ。
ぜんぶ独り占めしたい。
いつかその時が来るまで。
今は、なにも気づいてないマヌケのフリをして。
いつも通りに笑ってみせる。
手の中のミルクティーの冷たさが、俺を現実に繫ぎ止める。
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しょぴお - このお話すごく好きでした。今まで更新お疲れ様です。ずっと読んでました。笑 お話の終わり方がすごい、いい感じですね。このお話大好きです。 (2019年5月31日 19時) (レス) id: d08dff729e (このIDを非表示/違反報告)
れいな(プロフ) - 続編待ってます。 (2019年5月30日 11時) (レス) id: f9aa5203aa (このIDを非表示/違反報告)
Momanao(プロフ) - 続編、楽しみにしてます!なんか...嵐が吹き荒れる予感が... (2019年5月16日 1時) (レス) id: a8ed6fc393 (このIDを非表示/違反報告)
しょぴお - 話を読んでて泣きそうになった…。いや、泣く笑 (2019年5月14日 22時) (レス) id: d08dff729e (このIDを非表示/違反報告)
ミックスジュース(プロフ) - なべしょに頑張って欲しい!この作品大好きです!!これからも頑張って下さい!楽しみしています(^○^) (2019年5月14日 20時) (レス) id: 6b8cfc92fa (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おかゆ | 作成日時:2019年2月1日 14時