後の祭り:W ページ18
「ねぇ、翔太、本当にうち来ないの？」
渡「いかない」
「なんで？すぐそこだよ。一人暮らしだし」
半個室のような大衆居酒屋で、適当に頼んだハイボールを呷る。確か、4杯目だったか、それとも5杯目だったか。
グラスの水滴が手の平について不愉快だった。
目の前の女と会うのはたぶん2度目くらいで、それなのに軽々しく"翔太"なんて呼んでくるのが、馴れ馴れしくて鬱陶しい。
お前の口から"翔太"なんて聞いても、これっぽっちも満たされない。
「いいじゃん、うちで、も一回飲み直そ？」
甘い顔で、甘い声で、色っぽく笑って、俺を誘う。
いい女だとは、思う。
顔も、体も。
恐らく、後腐れもない。
俺に抱かれることだけを求めているみたいで、たぶん、都合がいい。
それなのに。
俺には利点しかないだろうに。
なのに、全然欲しくない。
「ねえってば」
女の細い指がのびてきて、俺の手に絡みつく。
すべすべで、少しだけヒヤリとしていた。
それで思い出すのは、やっぱりA。どうしたってAから離れられない。
あいつのことは、考えたくないのに。
Aの手は、暖かかった。
俺があいつの体温を知ったのは、Aが風邪をひいて寝込んだ日だった。
だからたぶん、あれはまがい物の体温だ。
力の入っていない手は、変に暖かかった。
女の手から逃げるようにまたグラスを持って、一口流し込んだ。
渡「お前の手、冷てえ」
「そうだよ。だから翔太があっためてよ」
渡「ヤダよ。俺は手のあったかい女が好きなの」
「好きな女の手があったかい、の間違いじゃない？」
渡「………、なに？生意気なんだけど」
女が、知ったような顔で、生意気にも図星を言い当てたように思っていそうなのが、無性にイラつく。
「ねぇ、やっぱりうちに行こ？今日大きい夏祭りがあったの。だから帰り電車混むよ」
渡「……その話すんな」
そうだった。
今日の俺に、帰る場所はないんだった。
だからわざわざ興味もない女と会ってまでして、時間を潰していたんだった。
夏祭り中、照とAがあまりにも遅いもんだから、いい加減おかしく思ってふっかに行方を聞いた。
そして帰ってきたふっかの言葉に、混乱して、頭に血が上って、もうわけもわからずその場を飛び出してしまった。
ちょうど連絡がきてたから、適当にこの女に連絡して。
それで、こんなことになっているんだった。
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しょぴお - このお話すごく好きでした。今まで更新お疲れ様です。ずっと読んでました。笑 お話の終わり方がすごい、いい感じですね。このお話大好きです。 (2019年5月31日 19時) (
レス) id: d08dff729e (このIDを非表示/違反報告)
れいな(プロフ) - 続編待ってます。 (2019年5月30日 11時) (レス) id: f9aa5203aa (このIDを非表示/違反報告)
Momanao(プロフ) - 続編、楽しみにしてます！なんか...嵐が吹き荒れる予感が... (2019年5月16日 1時) (レス) id: a8ed6fc393 (このIDを非表示/違反報告)
しょぴお - 話を読んでて泣きそうになった…。いや、泣く笑 (2019年5月14日 22時) (レス) id: d08dff729e (このIDを非表示/違反報告)
ミックスジュース(プロフ) - なべしょに頑張って欲しい！この作品大好きです！！これからも頑張って下さい！楽しみしています(^○^) (2019年5月14日 20時) (レス) id: 6b8cfc92fa (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：おかゆ
| 作成日時：2019年2月1日 14時
