酩酊と体温:I ページ7
「Aさんはい、カップ麺食べて。こぼさないでよ！……え？いらない？！ねーー！Aさんが食べたいって言うから俺買ったんだよ？！」
Aの名前を耳が聞き取ってそれを頼りに進むと、コンビニの駐車場で座り込む1組の男女に行き着いた。
背を向けている男が、Aの肩を揺さぶっている。
揺さぶられているのは紛れもなくAで、その振動に楽しそうにキャッキャとはしゃいでいる。
岩「……あの……あ、お前、」
「……あー！あんた、事務所にいた…！あんたが"ひかる"だったんだ」
俺の躊躇いがちな声に振り返ったその男は、いつかにAのバイト先で見た、軽そうな男だった。
岩「たしか………木村？とか言ったっけ」
「そう！木村です。まあどうでもいいんだけど、本当、来てくれて助かりました……ほら、Aさん、照さん来てくれたよ！」
木村がAの体を支えて、俺に向ける。
トロンと溶けた目、真っ赤な顔、ゆるゆるに緩んでにやけた口元。
これぞ酔っ払いだ。
酔っ払いは俺の顔を認識した途端、とんでもなく嬉しそうに顔を輝かせた。
「えーーー！？ひかるだぁ！なんでいるの？！」
「俺が呼んだの！自然に来たみたいに言うな！あと声デカい！」
うまく回っていなくて、いつもより若干舌ったらずな声。
「すっごい会いたかったー！ひかる会いに来てくれたの？たすかったぞー！しぬかと思ったぜー！」
「お前なぁ！助けたのほぼ俺！……完全無視だしな！」
立ち上がって、フラついて、それを木村が支える。Aはとろけた目で俺だけを見て、嬉しそうに俺に手を伸ばす。
「あれ？キムキムもいる！キムキムも会いにきてくれたのぉ？キムさん白い服がにあっていますね〜」
「俺はずっといた！！ねぇ照さん、早く引き取って！」
岩「あ、ああ」
少しだけ呆気にとられていて、木村の切羽詰まった声で現実に引き戻された。
岩「コラ、A。後輩にこんな迷惑かけんな」
Aに手を差し伸べたら、なんのためらいもなく、とびきりの笑顔で俺の手を取った。
Aと俺の手が繋がった、初めての瞬間。
Aはなにも、わかってない。
「ひーちゃん！おはよぉ、ラーメンあるけどたべる？」
走ってここに向かっている間、なんて叱りつけるべきかずっと考えていた。
だけど、こんな屈託無い笑顔で笑われたら、そんなことできない。
笑顔につられて、思わず吹き出してしまった。
俺は結局お前に弱いな。
「俺が買ったラーメンだからね！」
木村は怒ってたけど。
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しょぴお - このお話すごく好きでした。今まで更新お疲れ様です。ずっと読んでました。笑 お話の終わり方がすごい、いい感じですね。このお話大好きです。 (2019年5月31日 19時) (
レス) id: d08dff729e (このIDを非表示/違反報告)
れいな(プロフ) - 続編待ってます。 (2019年5月30日 11時) (レス) id: f9aa5203aa (このIDを非表示/違反報告)
Momanao(プロフ) - 続編、楽しみにしてます！なんか...嵐が吹き荒れる予感が... (2019年5月16日 1時) (レス) id: a8ed6fc393 (このIDを非表示/違反報告)
しょぴお - 話を読んでて泣きそうになった…。いや、泣く笑 (2019年5月14日 22時) (レス) id: d08dff729e (このIDを非表示/違反報告)
ミックスジュース(プロフ) - なべしょに頑張って欲しい！この作品大好きです！！これからも頑張って下さい！楽しみしています(^○^) (2019年5月14日 20時) (レス) id: 6b8cfc92fa (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：おかゆ
| 作成日時：2019年2月1日 14時
