夏祭り ページ41
駅は、夏祭りへ向かうであろう人たちでごった返していた。
時折浴衣を着た人たちが、連れ立って改札に吸い込まれて行くのを、なんとも言えない気持ちで眺めている。
時間をかけたおかげで、なんとかしっかり着れた浴衣。浴衣に合うようアップにした髪に、なべしょと買いに行った黄色い花の髪飾りを刺して。靴擦れした時のために、絆創膏も持ってきた。
あたしは今、照を待っている。
照のバイトの終わる時間に合わせて、準備を終えて、シェアハウスの最寄りの駅で待ち合わせた。
ここから2人で、先に行ったみんなの元へ向かうんだけど。
なんであたし、こんな、緊張してるの。
浴衣を着たのは自己満足。
髪を綺麗にまとめたのも、自己満足。
もちろん可愛い髪飾りだって自己満足。
そのはずなのに。
照はあたしをどう思うかなぁ、なんて思ってる。
5人に出会うまで2人きりかぁ、なんて考えてる。
どうしようもない。
6人の中にいるのだったら、きっと自然に、なにも意識しないで会えたはずなのに。
2人だとダメ。
照だと、ダメ。
変な気を紛らわすために、銀の柱に写る歪んだ形の自分を見つめた。
浴衣姿で緊張を隠せないでいる、いつもと違うあたしが写ってて、気なんて全然紛れなかった。
それから2分くらいして、スマホへ照からメッセージが届いた。
『もうつく。A何色？』
たぶん浴衣のことだろうけれど、何色？なんていう不思議な表現がおかしくて、思わず吹き出す。
『紺だよ』
すぐに返信して、近くに照がいないか見渡す。
スマホと周囲を交互に見て、あたりを少しだけウロついて。
やがてパチリと、あたしの目は照の目を捉えた。
照は流れる人の波の中で、ただじっと立っていた。
大きいおかげで、周りから顔だけ出てて、見つけやすかった。
「照！」
思わず大きな声で呼びかければ、あたしたちはしっかり目が合っていたはずなのに、照はハッとして、すぐに目を細めて微笑んだ。
その瞬間、忘れていた緊張が、ブワッと一気に襲ってきて。照の元へと進む足が、ピタリと一瞬強張った。
照に会っちゃった。
照に見られちゃった。
でも、緊張してるなんてバレるのも嫌だし、緊張してるって認めるのも嫌だしで、なんとか平静を装って、強張る足を動かした。
岩「……おまたせ、」
「ううん…全然、待ってないよ」
照は、わかりやすく、緊張していた。
そのせいで、もう訳もわからず無性に恥ずかしくなってしまって。
2人して顔を赤くして、目をそらした。
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すずの(プロフ) - しょっぴーしんどみが深いです！ (2019年5月5日 2時) (
レス) id: 0281d1cc7e (このIDを非表示/違反報告)
もやし(プロフ) - 改めて最初から読み直しました！！しょっぴーが切ない…。しょっぴー頑張れ！！笑 (2019年1月25日 1時) (レス) id: e09021bb44 (このIDを非表示/違反報告)
とみちゃん(プロフ) - あなたの紡ぐ文章が読めて嬉しいです、応援してます。 (2019年1月25日 1時) (レス) id: df9c0b9860 (このIDを非表示/違反報告)
慧(プロフ) - 最近は更新が毎日あって寝る前の楽しみになっています！無理せず頑張ってください！本当に文章やストーリーがお上手で感動します（；＿；） (2019年1月24日 1時) (レス) id: 32bd2067cf (このIDを非表示/違反報告)
にゃんこけし(プロフ) - 阿部担だけど、なべがものすごく気になってしまいます…(笑) 物語もいよいよ佳境ですが、メンバー目線もっと読みたいです♪ 更新無理せず頑張って下さい(*´∀｀*) (2019年1月23日 17時) (携帯から) (レス) id: b63c0386f9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：おかゆ
| 作成日時：2018年12月18日 4時
