夏祭りにむけて:W ページ32
「なべしょ、買い物付き合ってほしいんだけどさ、明日か明後日あたり、あいてない？」
渡「…は、俺？」
「そう」
晩飯が済んで、リビングで何をするでもなくスマホをいじっていた。ソファーに沈み込むように座る俺を、後ろから覗き込んできたAが、軽い調子でそう言う。
渡「どっちも昼ならあいてるけど」
「ほんと！やった」
渡「え、なんで俺？」
それは、至極真っ当な疑問だったと思う。
何を買うかにもよるとは思うけれど、でも、何を買うにしたって、何故俺がその役目に選ばれたのかが気になる。
少なくともこの家の6人の中からは1番に選ばれた、というだけで、心が浮かばれてる自分がいるんだ。
「夏祭りで浴衣着る予定なんだけど、それに合いそうな髪飾り買おっかなーって」
渡「……んで、なんで俺？」
「いや……なべしょが1番、あたしに合いそうなの選んでくれそうだなって、思ったからだけど……」
なんでそんなこと聞くの？とでも言いたげな訝しむ表情で、俺にそう告げる。
その言葉がどれだけの力を持つかも知らずに。
そんなこと言われて、舞い上がらないわけない。
俺が勘違いしちゃったら、どうするわけ？
渡「……へ、へぇ」
「水着も、結局なべしょのアドバイスで選んで正解だったし」
渡「あ、ああ。そんなこともあったな」
「……え、嫌なら全然他の人に頼むから大丈夫だけど…」
渡「は、はぁ？！嫌じゃねえよ！そんなこと言ってねーだろ」
「なんでキレてんの？ww」
渡「キレてない」
「じゃ、明日、お願いね」
渡「……おう」
ほんと、ズルイよな。
お前のなんてことない一言で、舞い上がったり落ち込んだり。
お前は俺のことをこんなに悩ませてるだなんて、これっぽっちも知らないのに。
6人の中から、お前に似合うものを選べる男として選ばれただなんていうほんの小さなことが、悔しいけど嬉しくてたまらない。
ただなんとなく、俺がその役目に選ばれたことを、照が知ればいいのに、なんてことを思った。
そして、そんなことを考えた自分に、ゾッとした。
照が知って、俺を羨ましく思えばいいんだ。
Aが"照"と呼んだのを、俺が初めて聞いた時のように。
悔しくて焦って、でもそれを認めたくない、あの行き場のない気持ちになればいいんだ。
そんな汚くて嫌なことを考えてしまった自分に、ゾッとした。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 716人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「SnowMan」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
すずの(プロフ) - しょっぴーしんどみが深いです！ (2019年5月5日 2時) (
レス) id: 0281d1cc7e (このIDを非表示/違反報告)
もやし(プロフ) - 改めて最初から読み直しました！！しょっぴーが切ない…。しょっぴー頑張れ！！笑 (2019年1月25日 1時) (レス) id: e09021bb44 (このIDを非表示/違反報告)
とみちゃん(プロフ) - あなたの紡ぐ文章が読めて嬉しいです、応援してます。 (2019年1月25日 1時) (レス) id: df9c0b9860 (このIDを非表示/違反報告)
慧(プロフ) - 最近は更新が毎日あって寝る前の楽しみになっています！無理せず頑張ってください！本当に文章やストーリーがお上手で感動します（；＿；） (2019年1月24日 1時) (レス) id: 32bd2067cf (このIDを非表示/違反報告)
にゃんこけし(プロフ) - 阿部担だけど、なべがものすごく気になってしまいます…(笑) 物語もいよいよ佳境ですが、メンバー目線もっと読みたいです♪ 更新無理せず頑張って下さい(*´∀｀*) (2019年1月23日 17時) (携帯から) (レス) id: b63c0386f9 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：おかゆ
| 作成日時：2018年12月18日 4時
