夏カゼ:W ページ24
照に言われた通り、無断でドアを開けてAの部屋に入った。
緊張しないと言ったら嘘になるけど、それよりも色んなことが頭に渦巻いていて、あまり気にならなかった。
あれ以降なんとなくタイミングが合わなくて、一言も口をきけていない今。第一声は何にしたらいいのか。
部屋の隅のベッドは、穏やかに上下していて、本当に安静に寝ているように見えた。
だから、いくつかのことを確かめるために、俺はひとり言を装って、一言こぼした。
渡「夏カゼってバカがひくもんだって、知ってる？」
「………っ！なべしょ？」
ほら、やっぱり。
渡「起きてんじゃん」
ベッドサイドに近寄れば、驚いた様子のAと目があった。
真っ白に血の気の引いた顔。とろんとした目。辛そうな呼吸。眉根に寄ったしわ。汗で額に張り付いた前髪。
一目で調子が最悪なのがわかる状態だった。
渡「照には寝たフリしてたの？」
ちらりと見やったテーブルの上には、何も乗ってない皿。体温計。未使用の冷えピタ。その横の薬と水には手がつけられた形跡がない。
渡「ったく……大人なんだか子どもなんだか」
見たことない、こんな表情のA。
調子が悪いのだから当たり前なんだけど、それでも確かに俺に助けを求めているのがわかって、胸が締め付けられた。
Aは、俺だとわかったから反応した。
俺、必要な存在でいられたみたい。
冷えピタを手にとって、何も言わずにAに向き直る。
額に張り付いた前髪をかきあげて、汗を軽く拭き取る。Aは黙ってされるがままだ。
2人とも黙ったまま。ペタリ、冷えピタをAの額に貼り付ける。
Aは冷たさで少しだけ目をつむって、それをゆっくりと開けると、溶けた目で俺を見つめた。
渡「……しんどい？」
Aは俺の言葉に小さく頷くと、途端に泣きそうに顔を歪めてしまう。
「うぅ〜〜……なべしょ」
渡「なに。なにが欲しい？」
「……なべしょ」
渡「いるよ。どした？欲しいもんは？」
「なべしょ」
渡「お前俺の名前しか言ってないよww」
「ずっと、なべしょ助けてって、思ってた。だから欲しいもの、もうない」
渡「……っ、」
息が止まる。
やめろって。なあ。
そんなこと言われたら、胸が苦しくてたまらなくなる。
そんな目で見られて、縋られて、微笑まれたら、胸が痛くてたまらなくなる。
辛い。痛い。やめてほしい。
………嘘だ。やめないで。
こんなに辛いのに、こんなに幸せで、俺は俺がわからない。
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すずの(プロフ) - しょっぴーしんどみが深いです！ (2019年5月5日 2時) (
レス) id: 0281d1cc7e (このIDを非表示/違反報告)
もやし(プロフ) - 改めて最初から読み直しました！！しょっぴーが切ない…。しょっぴー頑張れ！！笑 (2019年1月25日 1時) (レス) id: e09021bb44 (このIDを非表示/違反報告)
とみちゃん(プロフ) - あなたの紡ぐ文章が読めて嬉しいです、応援してます。 (2019年1月25日 1時) (レス) id: df9c0b9860 (このIDを非表示/違反報告)
慧(プロフ) - 最近は更新が毎日あって寝る前の楽しみになっています！無理せず頑張ってください！本当に文章やストーリーがお上手で感動します（；＿；） (2019年1月24日 1時) (レス) id: 32bd2067cf (このIDを非表示/違反報告)
にゃんこけし(プロフ) - 阿部担だけど、なべがものすごく気になってしまいます…(笑) 物語もいよいよ佳境ですが、メンバー目線もっと読みたいです♪ 更新無理せず頑張って下さい(*´∀｀*) (2019年1月23日 17時) (携帯から) (レス) id: b63c0386f9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：おかゆ
| 作成日時：2018年12月18日 4時
