(２１) ページ22
・
気まずい空気の中、二人から僕を気遣うような言葉を送られたがどれも頭には入ってこなかった。
いくらか重たく感じるようになった足を引きずりながら自室へと歩く。
様子のおかしい僕を心配したのか、セブルスが自室の前まで送ってくれた。
その間何も話しかけてこなかったのは実に彼らしいなと、疲れきった頭で思った。
セブルスに礼を言って中に入る。
風呂に入る気力もなくて、全て魔法で終わらせてしまった。魔法って便利。
そういえば……そろそろハロウィンが近かったな。
風が強く吹きかけ、窓をガタガタと揺らした。
ベッドに体を横たえて目を伏せる。
やかましく揺れる窓枠の音が子守唄に聞こえるくらいには疲れ果てていて
意識がぐんっと深く持っていかれる。
…………せめて、夢の中では
『リー……マ…ス』
君と笑っていられますように。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
夢を見た。
遠い遠い………昔の事。
まだ、僕らが学生だった頃の夢。
何も知らず、何もわからず、けれど、全てを手にしていた若き日々。
『ジェームズ！シリウス！！また君たちは性懲りも無くこんな低レベルな悪戯を！！！！』
「なんだぁ？A、何そんなにカッカしてんだよ」
「生理じゃないか？」
「こら、ジェームズ！」
「………Aは、お、男の子、だよ？」
『ジェームズ……。君、いい覚悟がお有りだね？』
ギャーーーーッと中庭に響き渡るジェームズの絶叫。
レイブンクロー生を怒らせるとやばいって本当だったなと笑うシリウス。
困った顔で「笑い事じゃないよ」と焦るリーマスに、それをオドオドと眺めるピーター。
僕は………幸せだったんだ。
なんでもないこの日々が永遠だと思っていた。
いや、永遠でなければならなかったんだ。
「リーマス！君の彼女凶暴すぎるよ！何とかしてくれ！！！」
「か、かのっ！？！？」
『誰が彼女だッ！！！！
待てっ！ジェームズ！！！！！』
「彼女じゃないなら奥さんかい！？！？！？」
「奥さん……」
「何感動してんだ？リーマス」
「A、は、男の子……だよ、ジェームズ」
「どう見ても可愛い女の子だよ、な？リーマス！」
「なんで私に振るんだい……」
「諦めろーA、お前は女だー」
『僕は………っ
男だぁぁぁぁぁ！！！』
あぁ、幸せだな……。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 272人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
わさび(プロフ) - ぴうさん» 嬉しいお言葉ありがとうございます！一気読み！？あ、あまりご無理なさらずに！！！ (5月22日 22時) (
レス) id: 4f48927b1a (このIDを非表示/違反報告)
ぴう(プロフ) - うぁぁ、タイプだぁぁ面白いです！これから一気読みします！ (5月20日 18時) (レス) id: c288b38476 (このIDを非表示/違反報告)
わさび(プロフ) - 龍さん» わぁぁぁ！ありがとうございます！！そう言っていただけてとても嬉しいです！！ (2022年8月22日 22時) (レス) @page42 id: 4f48927b1a (このIDを非表示/違反報告)
龍(プロフ) - めちゃくちゃ面白いです！続き楽しみにしています！ (2022年8月22日 20時) (レス) @page43 id: c13f564568 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：わさび | 作成日時：2022年8月1日 22時
