第28話 重なる ページ29
・
ひのやに来るお客さんや、さくら屋の姉様たちを思い出す。怪我をした、体調を崩したなどと話を聞けば必ず新井先生の名が出てくる。
良く診てくれる、良い薬をくれたと絶賛する人ばかりだ。
先生に伝えれば、眉毛をハの字にして褒められて反応に困るといった顔をした。
「当たり前のことをしてるだけですよ。
うん、足も大丈夫そうです。この分なら傷跡も残らないでしょう」
『ありがとうございます、先生』
子供の頭を撫でるみたいに優しげに手が伸びてくる。その仕草に父親の姿を重ねてしまった。
「あ、すみません。Aさんはこんな事する歳ではないですよね。子供たちもここに来るものですから癖で」
『いえ、なんだか父親みたいだと思ってました』
「それは……医者だと言っていた、お父上ですか? 」
私は吉原に来る前、小さな村にいた。父はそこで医者をしていた。
私が怪我をして父が治療をした後、こうして頭を撫でてくれた。
それが新井先生のと重なる。
「少し聞きました。確か、ある戦いに巻き込まれたと」
『ええ。実は私その時のことはよく覚えてなくて……でも、最期は誰かを庇ったと聞きました』
「辛かったですね……」
『でも医者の父らしいです。そんな父を私は心から尊敬してます』
私の思い出話を聞いてくれた先生にお礼を告げ、診察室を出る。先生は最後にもう一度頭を撫でてくれた。
出入り口に向かえば3人の後ろ姿が見える。銀時さんが気づいてくれて、手をあげて迎えてくれる。
神楽ちゃんもやっと終わったという顔をして太陽を避けるように大きな傘を開いた。
今日の目当ては私の病院ではなく、最近吉原に出来た団子屋だ。
私が以前その話をすると、一緒に行こうと誘ってくれた。なので今日は少しおめかししている。
「Aさん、そのかんざしお似合いですよ」
『ほんと? ありがとう、新八くん』
いつもは付けないかんざしに気づいてくれた新八くんにお礼を告げ、4人で目的地に向かって歩き出す。
斜め上から視線を感じたので見上げれば、難しい顔をした銀時さんと目が合う。
「ぶぶ、無事だよな、A」
『足も完治してるって言われました。普通に終わりましたよ』
無事という単語の意味がわかり、返答すれば深く息を吐きいつもの眠そうな瞳に戻る。
ゆっくり歩いてたのが焦ったくなったらしい神楽ちゃんは、突然私の手を引く。
新八くんも銀時さんも置いてきぼりにして、団子屋に向かって走り出した。
482人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「銀魂」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
月夜の光(プロフ) - ありちゃんさん» コメントありがとうございます!!そう言ってもらえてすごく嬉しいです(;o;)もっと上手に表現できるように頑張ります!ありがとうございます! (2021年2月28日 15時) (レス) id: e8dd5af318 (このIDを非表示/違反報告)
ありちゃん(プロフ) - 月夜の光さんの神威が好きすぎて他の作品見れなくなりそうです!!キュンキュンします(^^)更新楽しみにしてます (2021年2月27日 20時) (レス) id: 15fe9d02c8 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:月夜の光 | 作成日時:2021年1月2日 22時