第32話 小さな侍 ページ33
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今日の吉原はあいにくの雨。そのせいか今はお客さんは銀時さんたちだけ。店内も明かりがついてるけど、薄暗い。雨音に気をとられていれば月詠さんの凛とした声が耳に響く。
「これで4件目じゃ」
みんなに見えるようにテーブルに並べられた写真。
私もおぼんを胸に抱えながら、銀時さんの背後からチラリと邪魔にならないように覗き込む。
その写真は正面や斜め上からと角度はバラバラだったが、みんな着物を着た女性の写真。腕や顔などに怪我を負っている。痛々しい姿につい目を逸らす。
「この人じゃないですか。団子屋にいた」
「あー、確かにあのねーちゃんだな」
新八くんが1枚の写真を手に取り、銀時さんと後ろにいる私に見せてくれる。そうだ、この人だ。首に包帯を巻いているのがわかる。
「閉店作業を1人でしてたところを襲われたそうじゃ」
「この数日間で4人も。同一人物じゃないのかい? 」
日輪さんの言葉に月詠さんは曖昧な表情。団子屋の人だけじゃない。その他にも襲われた人がいるんだ…
「この人、スーパーの店員さんだよね。A姉」
『本当だね……』
日輪さんの横から晴太くんが見せてくれた女性は、4人で行ったスーパーで見かけた店員さんだった。見知った顔が2人もいて、この事件がさらに身近に感じる。
「だが、4人に決め手になる共通点はない。強いて言うなら、全員が女で20代前後であることじゃな」
「無差別か、それとも何か狙いがあるのか」
共通点……なんだろう。違和感がある気がするのにそれが何か分からない。
「百華も街の警備を強化している。極力は女1人で出歩くなと警告も出している。
日輪、Aも1人では出歩かんようにな」
月詠さんは仕事に戻るみたい。写真を回収し、私と日輪さんに忠告すれば颯爽と出て行った。
「A、さくら屋を帰る時も気をつけるんだよ。なんなら百華を1人護衛につけても」
『いえ、大丈夫ですよ日輪さん。さくら屋からアパートまでそれほど遠くないですから』
日輪さんの気遣いはとても嬉しいが、私1人の為に忙しい百華を護衛になんてわがままだ。丁寧にお断りする。複雑な表情の日輪さん。だがそれより私は日輪さんの方が心配だ、と話をすれば晴太くんが胸を叩く。
「母ちゃんのことは俺が護るから心配しないで! 」
『晴太くんは小さな侍だね』
「ふふ。頼もしいねぇ」
晴太くんの頭を撫でれば嬉しそうに笑った。
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月夜の光(プロフ) - ありちゃんさん» コメントありがとうございます!!そう言ってもらえてすごく嬉しいです(;o;)もっと上手に表現できるように頑張ります!ありがとうございます! (2021年2月28日 15時) (レス) id: e8dd5af318 (このIDを非表示/違反報告)
ありちゃん(プロフ) - 月夜の光さんの神威が好きすぎて他の作品見れなくなりそうです!!キュンキュンします(^^)更新楽しみにしてます (2021年2月27日 20時) (レス) id: 15fe9d02c8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:月夜の光 | 作成日時:2021年1月2日 22時