第20話 誰ですか! ページ21
・
さくら屋は鳳仙様が仕切っていた店ほど大きくはないが、
度々政府関係や私たち一般人が関わってはいけない
裏の会合などにも使われる。
国を
一つや二つ知り得ている遊女も少なくないらしい。
「上客らしいわよ」
つまりはお偉いさんが来るということ。
姉様たちはそんな噂話をしながら、綺麗に化粧をし、
美しく着飾る。
私はといえば夕方からその準備に追われていた。
『女将さんお料理の数、尋常じゃないです』
発注ミスなんじゃないかと思うほどに、
次々と目の前に並ぶ美味しそうな料理たち。
女将さんは笑い飛ばしながら、
これがお客様の要望だと教えてくれた。
今夜も宴がはじまる。
廊下に出された、空のお酒の瓶や料理のお皿を次々と下げていく。
そんな中、いくら下げてもすぐに空のお皿が積み上がる部屋があった。
噂にあったお偉いさんの部屋だ。
『よく食べる人たちだな……』
率直な感想を誰にでもなく述べていると、
急に目の前に誰かが立ち塞がる。
視界が黒で覆われ、両手にお皿を抱えているせいで、
身動きがとれない。
『ひっ! 』
小さく悲鳴をあげた後にひどく後悔する。
お客さんの可能性が高い。しかも今日いるのは上客ばかり。
失態だ怒られる、と1人で慌ててると、
「おい」
声をかけられた。右を見ても左を見ても私しかいない。
文句を言われる覚悟で顔を上げれば、記憶の中にある顔だった。
それは目の前の人物も同じだったようで、
少しだけ細めていた瞳を丸くする。
「あん時の嬢ちゃんじゃねーか」
先に思い出話をしたのは相手だった。
まだ、数ヶ月前の記憶。
吉原の炎上の時、路地裏に倒れていた男性。
怪我の具合が一番酷かったのでよく覚えている。
『怪我は、治りましたか? 』
数ヶ月も経ってるんだから、ほぼ完治してるだろうと分かってはいるけど、会話に困ってつい口にする。
「なんとかなァ。
おかげで団長にも捨てられずに済んだよ」
団長とは?
半分は明らかに私の知ってる話ではない。
と、とりあえず曖昧に笑ってこの場をやり過ごそう。
この店の従業員かと聞かれ、肯定すれば疲れきったようにため息をつく。
「この店も広すぎて、おじさん探すの疲れちゃったよ。
団長のいる部屋ってのはどこだ? 」
……ですから、団長って誰ですか!
・
482人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「銀魂」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
月夜の光(プロフ) - ありちゃんさん» コメントありがとうございます!!そう言ってもらえてすごく嬉しいです(;o;)もっと上手に表現できるように頑張ります!ありがとうございます! (2021年2月28日 15時) (レス) id: e8dd5af318 (このIDを非表示/違反報告)
ありちゃん(プロフ) - 月夜の光さんの神威が好きすぎて他の作品見れなくなりそうです!!キュンキュンします(^^)更新楽しみにしてます (2021年2月27日 20時) (レス) id: 15fe9d02c8 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:月夜の光 | 作成日時:2021年1月2日 22時