花が咲く頃に【wrwrd】 (ページ5)

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【待つこと/rbr】ページ5

「ロボロ、本当に行くの」

「…うん」

出発する当日にもなって、未だにそんなことを聞いてしまうのは野暮だとわかっているけれど、聞かずにはいられなかった。

ロボロは、小さい頃からずっと一緒の幼馴染。
幼稚園の頃のロボロは、私なんかよりずっと泣き虫で、私がロボロを庇っていたこともよくあった。

いつの間にか、ほんの少しだけ越された身長。強くなった力。

ロボロは二週間前、街の軍学校に行くと私に言った。言った、というか、言わざるを得なかった、と言う感じだ。もっと早くに決まっていたはずなのに、私には何も言わず受験をして、合格してきた。

お母さんに「知らなかったの！？」と言われ、制止も聞かず、私はロボロが一人暮らしをするアパートの二階へ走った。夜にも関わらず、大声を出して問い詰めたものだ。

それくらい、私の中でロボロは大きい存在だった。思春期に入って、話すのが少したどたどしくなったときもある。それでもまた昔みたいに戻って、つまんない話ばっか繰り返して、笑い合った。私にとって、その日々がどれほど大きなものだったか。

ロボロは「言い出せなかったんや、すまんかった」と言って、何度も私に謝った。
私はお父さんを戦争で亡くしている。だから、私はロボロに軍になんて入って欲しくなかった。でも。

「…頑張ってね」

「おう」

あのロボロが決めたことなのだから、応援する他無いのだ。
家で小さい頃から育ててきたアネモネの花束を差し出した。仲間内では「ロボロはピンク、みたいなイメージがある」と小耳に挟んだから、ピンクのアネモネを中心にした花束。

「…また、帰ってくる？」

なんとか絞り出した声は、自分でもびっくりする程震えていた。
否定されるのも肯定されるのも怖くて、ロボロの目を見れず、下を向いて唇をかむ。帰ってくるかどうかなんてわからない。そんなの、私が一番よくわかっていることなのに。

「俺、は」

「待って！」

ロボロが口を開いたのを阻止して、一度ぶんぶんと首を振った。
ロボロは、その様子をきょとんと見ている。

「変なこと聞いて、ごめん。…待ってるね」

今できる、精一杯の笑顔を見せた。
これでいい。これでいいと、信じたい。