花が咲く頃に【wrwrd】 (ページ21)

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「コネシマ王っ」

さっきまで居た部屋の戸を叩く。

なんで忘れていたのだろう。忘れていた上に、話を聞いても思い出せなかった。

扉はすぐに開いた。

そこに立っているのは愛しい人だ。
かつて愛して、叶わないと諦めた相手。

「お前っ……」
「……私、私だって！」

あなたのことが好きだった。

叫ぶように伝えると、王はさらに目を見開いた。

でも、彼を独占することはできない。彼は国を背負っている王だった。

戦争が激化する中、彼は言った。お前と一緒に居るのはよくないな、と。

平凡な私を連れていても、王にとってプラスになることはない。ただのお荷物だとわかっていた。……ううん、そう思い込んでいた。

だから私は、彼の意思を汲んだつもりだった。

「思い出したんか、お前、」
「はい。黄色いチューリップを、見たから……」

私が最後に送ったのが、黄色いチューリップだった。

「花言葉は名声ですよ、とかなんとか言って、これを置いていったかと思ったら……お前！翌日には城に居らんかったやん」
「私がそばにいてもマイナスばっかりで……ここにいちゃいけないって思ったんです」

黄色いチューリップの花言葉は、『名声』。あなたにぴったりだと思った。

それと同時に、

「黄色いチューリップの花言葉はあれやろ。……『望みのない恋』」

ぽつりと王が言う。

「……花言葉なんて、知ってたんですか」
「教えてくれた奴が居んねん。やからお前、これがお前の答えやと思った」

私の答え？違う、私の行き場のない感情だ。

望みのない恋だと思っていた。

だからあなたの意思を汲んで、私は姿を消そうと思ったのだ。

「あのとき、……俺は王やからな。さっきも話したけど、お前は俺の弱点になり得た。お前の行動は確かに俺の意思を汲んでたよ。……いやぁ、でもな、お前が居ないことで、あんなにも自分が弱くなるなんて思わんかった。気付かないものだねぇ」

王は照れたように頭を掻きながら言った。

「お前は俺に、……必要不可欠やったみたいやわ！」

あの時の私たちは、好きだからというだけでは一緒にいられないと思っていた。

もしかしたら、それは間違っていたのかもしれない。

あのときああしていたら。そんなこと考えてもわからないし、仕方がない。

でもこうやって、また会えた。

「今世なら。……ワンチャンありますかね」

私が言うと、王は私の好きだった清々しい顔で笑った。

「……あるで！」

今の私たちは、平和な世に生まれたのだから。