花が咲く頃に【wrwrd】 (ページ13)

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【もう1つの意味/ut】ページ13

いつものように紫煙を燻らせていると聞こえてきたのはいつもより控えめなノック音。

人が機嫌よく煙草吸うてるときに誰やねんなんて心の中で悪態を吐きながら「ど～ぞ」と中に入るよう促せばゆっくりと扉が開く。

姿を現したのは見慣れないメイドだった。

特別可愛いわけでもなく、かと言って不細工でもない。ごくごく普通の子。

どうせ雇うならもっと可愛い子でもええやん、なんて言葉は胸の内にしまっておこう。

「で、どないしたん？」

『トントン様より伝言を預かってまいりました』

「げっ…どうせ「はよ書類持って来い」とかそんなんやろ？」

『はい、その通りでございます。トントンさんこんな顔して怒ってましたよ』

そう言って彼女は眉間にぎゅっとしわを寄せて怒ったような顔をしてみせる。

うちのメイドはどの子もきっちりとしていて彼女のように顔芸をしてくれるような子なんていない、だからこそ彼女がえらく新鮮で可愛らしく思えた。

「ふは、君面白い子やな。というか君はなんで花を持ってんの？伝言しに来ただけとちゃうん？」

先ほどから疑問に思っていたことを口にすれば彼女は眉間にしわを寄せていた顔から一変して少女のような笑顔を浮かべた。

『鬱様のお部屋に飾っていただきたくて持ってまいりました』

「あぁ、そうやったんや。空いてる花瓶なら窓際にあるし飾ってもらってかまへんよ。にしても…この花えらい派手な色しとんな」

『確かに少し色は派手ですがこれだけでお部屋の雰囲気がぱぁっと明るくなったような気がしません？』

「まぁ確かに。でもこの花俺やなくてチーノとかシャオちゃんの方がよかったんちゃう？」

『えっ？あ…えっと…どうしても鬱様のお部屋に飾っていただきたくて…』

何気ない言葉だったのだが何故か彼女にほんの少しだけ動揺の色が見えた。

「ふぅん、なんでどうしても僕の部屋がよかったん？」

あまりにわかりやすく動揺するものだからほんの少しだけ揶揄いたくなってしまった。

『ぁ、え…は、花言葉ですよ！春車菊の花言葉に「常に快活」ってあるんですよ、だから元気になれるかなと…』

「なるほど、ね。気遣いありがとぉな」

『いえいえ、そんな…で、では、私は失礼します…！お仕事頑張ってくださいね』

そう言うと彼女は半ば逃げるように部屋から出て行ってしまった。

「面白い子やなぁ…さて、とほな仕事でもするか～」

何故か高鳴る胸の音に気づかないフリをして、グッと大きく伸びをし、書類に向かうことにした。