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なーくんは私の目の前まで来ると、しゃがみこんで、私をぎゅっと抱き締めた。
『……!』ビクッ
「…大丈夫だよ、怖かったねぇ」
抱き締められながら後頭部を撫でられ、ぼろぼろと涙が溢れる。
『…っなー、くん…』
「なーに?まずカッター、俺にちょうだい?…うん、ありがとう」
ある程度時間が経ったからか、切ったところの血は既に固まり始めていた。
「最近Aの様子が変だったから…何かあった?言いたくなかったら無理に言わなくていいけど、俺に頼って欲しいな」
いつもの優しい声に促されて、私は最近の辛かったことを全て話した。なーくんはうん、うんと相槌をうちながら最後まで聞いてくれた。
「そっか……辛かったね。気づいてあげられなくてごめんね」
『…なーくん、怒ってないの?』
「え?なんで?」
『…この前、莉犬とジェルくんに、酷いこと…言っちゃったから』
「あーその事か。もう怒ってないよ。俺もキツく言い過ぎちゃったね…ごめんね。」
『うぅご、めんっ…なさいヒック』
「なーんでまた謝るの〜?ほら、いっぱい泣いていいよ。偉かったねぇ、Aはえらいえらい」
なーくんの腕の中で、我慢せずにひとしきり泣いたら落ち着いた。
落ち着いたら、さっきまで気にしていなかった手首が急に痛み出し、無意識に傷口を押さえる。
「手首、手当てしよっか」
それに気づいたなーくんが、救急箱を持ってこようと立ち上がった。ただでさえ情緒不安定気味になっている私は、なーくんが離れていくのが不安で咄嗟に服を掴んだ。
『…っ行かないで』
「どーしたの?薬持ってくるだけだよ?……ふふ、一緒に行こっか」
鳥の雛が親について歩くように、なーくんにぴったりついて行って、手当てをしてもらう。
「…久しぶりだね、切っちゃったの。怖くなかった?」
『切ってるときは怖くないけど……今ちょっと怖くなってきた』
「次からは、辛くなる前に、俺でも誰でもいいから話して欲しい。一人で抱え込んだら苦しくなっちゃうよ」
『わかった』
「うん、ありがとう」
なーくんはどこまで優しいんだろう。昔から何度もこの優しさに救われてきた。
『なーくん』
「ん?」
『終わったら…もっかいぎゅってして?』
「…え?あ、いいよ!ほら、おいで?」
なーくんの腕の中は、安心出来て好きだ。
……なーくんの顔が真っ赤になっていることは、私は知るはずもない。
ーー
ゆあさんリクエストありがとうございました!
11.低血圧(莉犬)リク→←番外編.リスカ(ななもり。)リク
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つばさ - とても楽しかったです (7月5日 6時) (レス) @page47 id: dd93105dfa (このIDを非表示/違反報告)
あや - 久々に観に来ました!何回見ても飽きないです!ここまでお疲れ様でした! (2022年8月15日 13時) (レス) id: 7e40220ef6 (このIDを非表示/違反報告)
もなか(プロフ) - 野菜さん» 申し訳ありません…。現在リクエストは締め切ってしまっていまして、この話は「骨折」で終了する予定なんです…。ですが、続編を作る予定ですので、少し先になってしまうかもしれませんがそちらで書かせて頂きたいと思います!リクエストありがとうございます…! (2020年1月12日 2時) (レス) id: c18b45fe4f (このIDを非表示/違反報告)
もなか(プロフ) - さきさん» わ〜凄くわかります!!あの眠くなっちゃう現象は何でしょうね…?やっぱり安心する声だからでしょうか…! (2020年1月12日 2時) (レス) id: c18b45fe4f (このIDを非表示/違反報告)
もなか(プロフ) - 海月さん» 温かいコメントありがとうございます…!少しずつですがこれからも頑張りますので読んでいただけたら嬉しいです。 (2020年1月12日 2時) (レス) id: c18b45fe4f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:もなか | 作成日時:2019年9月20日 0時