【呪術廻戦】愛でしかない (男主) (ページ45)

今日:6 hit、昨日:1 hit、合計:34,460 hit

Episode6-2 ページ45

「あの愚かな人間が命を賭けて守った
小僧を、人質にする」

宿儺はそう言って、虎杖の肉体をその手で突き破り…
心臓を取り出して、それをポイッと投げ捨てた。
まるでゴミ屑のように。

許容範囲を超える現実に、頭が追いつかない。

ドクドクと脈打つ虎杖の心臓が、
別の生き物のようで、それが心臓だとは
瞬時に認識できなかった。

「俺と代わることは死を意味する」

そう言った宿儺は残虐な笑みを浮かべて、
何かを取り出し…

「さらにダメ押しだ」

それを飲み込んだ。

宿儺の指…。
中にいる特級呪霊が取り込んでいたのか。

その瞬間、脳裏に浮かんだのは…

1人で特級呪霊と戦う覚悟を決めた虎杖の
真っ直ぐな表情と、
自分の命を顧みず何の迷いもなく虎杖の元に
駆けていく結月の後ろ姿だった。

今度は、俺が覚悟を決める番だ。

俺は戦う体勢を整え、宿儺を真っ直ぐ見据える。

「アイツは、虎杖は戻ってくる。
その結果、自分の命がどうなろうと。
結月も、そういうところは虎杖そっくりだ」

俺の言葉に宿儺は笑って、口元に垂れていた
血を拭う。

「買い被り過ぎだ。
先刻もな、今際の際に怯えに怯え
ゴチャゴチャと御託を並べていたぞ？
断言する、ヤツに自死する度胸はない。
あの小さいのも、大した実力もなく
情に左右されるだけのただ哀れな生き物よ」

そんな宿儺の言葉より、特級にぶった斬られた
はずの虎杖の左手に意識が向いた。

腕が治っている。
治癒…反転術式が使えるんだ。

虎杖が戻る前に心臓を治させる。
心臓を欠いた体では勝てないと思わせるんだ。

結月が戦闘不能になっていると推測される今、
彼の応援は望み薄。

俺1人で立ち向かわなければならない。

……出来るか、俺に？

その問いに意味がないことは分かっていた。

結月が命を賭けて守ったであろう命。
自分のわがままで生かしたいと願った命。

それをここで見放していいわけがない。

出来るかじゃねえ、やるんだよ!!!

鵺を顕現させ、自分もその体ごと攻撃に転じた。