【呪術廻戦】愛でしかない (男主) (ページ44)

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Episode6-1 ページ44

【恵 side】
なんであの時、手を離して
しまったのだろう。

結月があんな言葉だけで、虎杖を1人で
残してきたことに納得するわけがない。

今になるとそう思えるが、あの時は一刻も早く
生得領域から出ることが最優先事項だと思った。

その選択はきっと間違っていなかったと信じたい。

問題はその後だ。
合図を送った後、中に再び戻ろうとした
結月の腕を掴んだ、はずだった。

だか、俺の手は何も掴めなかった。
そこにいるはずの結月に…触れられなかった。

妙な違和感が胸の中で燻り続けている。

雨は弱まることなく降り続いていたが、
そんなことよりも先程感じた結月への違和感と、
虎杖の安否だけに思考は向いていた。

悶々と考え込んでいると、生得領域が閉じたことに
気づいた。

特級が死んだんだ。後は虎杖と結月が戻れば…。

そう思った矢先、背後に感じた気配。
雨とは違う、肝が冷えるような嫌な汗が
ツゥーと背中を伝う。

「残念だがヤツなら戻らんぞ。あの小さいのも
暫くは使いものにならんだろう」

宿儺だ……。

小さいの、とは結月のことだろうか。
使いものにならない、ということは
死んではいない、のか…？

恐怖か怒りか、どの感情か分からないが、
俺はそれを抑え込むようにグッと拳を握りしめる。

「小僧は俺と代わるのに少々手こずっているようだ。
あの小さいのにトドメを刺すのを阻止するのが
精一杯だったようだな」

その瞬間、呼吸が止まったような気がした。

虎杖がギリギリで結月を救った、ってことか？
虎杖が阻止しなければ…結月は死んでいた…？

「しかし、あの小さいのは実に愚かだ。
情にかまけて、小僧の体に傷1つつけようとせん」

尚も宿儺から語られる結月の話に、俺は怒りに
呑み込まれそうになっていた。

きっと結月は、虎杖への愛故に宿儺に攻撃
出来ないでいたのだろう。
人格が宿儺であれど、肉体は虎杖のものだ。

結月ならどんな理由があれど……
虎杖を傷つけることなどしないだろうな。

結月の心情を思えば思うほど、怒りが奥底から
捻出されてくる。

しかしその怒りの炎は、次の宿儺の行動によって
鎮火されることとなった。