ep.10.5 ページ10
ピンッ
おでこに軽くデコピンされた。
う〜、地味に痛い...。
デコピンした本人は、いたって真剣な顔を
してるもんだから、俺は文句を言えず黙って
彼の目を見つめ返す。
そしたら翔くんは
「あんまりマイクやリードに心配かけんなよ」
と言った。
その言葉に、頭に浮かんだのは心配そうに
俺を見つめていた2人の顔。
そうやね、大好きな2人にはいつでも
明るい表情でいてほしい。
もうあんな顔させちゃ絶対にダメだ。
心配される度に、大事にされてるんかな、
なんて浮かれちゃうこともあるけどさ…
『わかってるよ』
そんな 2人の優しさは、もっと大事に
特別なものとして受け取らんとね。
素直にその言葉を受け入れてそう返すと、
彼はフッて頬を緩めて
「 あの2人は史悠に甘いんだから。
それは自覚しとるやろ？」
と眉を下げて笑った。
『それは、うん』
今回のことだって、わざわざ裏にまで
俺を追ってくる必要なんか全然なかった。
現に他のチームメイトたちは
「 "bunnyがまた騒いでるよ" 」
とか何とか言って笑ってた。
2人は真剣な顔をして、心配だって気持ちを
隠そうとしてなかった。
そんな俺の返事をきいた翔くんは、
グッと俺との距離を詰めてきて
「あと、もう1つ」
少しだけ身を屈めて、俺に目線をガッチリ
合わせてそう言う。
「俺は、ちゃんと史悠の気持ちわかってるから」
続けられた言葉に、俺は首を傾げる。
『俺の気持ち…？』
「俺のこと心配してくれてたんやろ？
一平さんから大体のことは聞いた」
そう言った翔くんは、少しだけ考え込む
素振りをした後…
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作者名：天然水。 | 作成日時：2024年1月5日 17時
