ep.10.4 ページ9
「 "何してんの？" 」
翔くんの声が聞こえた。
デトに抱きついたまま、声がした方に視線を向けると
呆れ顔の翔くんとちょっと驚いた顔のトラ兄がいた。
「 "何もしてないよ" 」
2人が来たことで、この状況が恥ずかしくなったのか
デトがややぶっきらぼうにそう言って、
俺を引き剥がした。
ぷぅと頬を膨ませて、不満げにデトを見てみるも
"そんな顔しても効かないぞ" って
感じの目を向けてくるだけ。
「 "はぁ…。怒る気失せた。
マイク、もう大丈夫だから戻って？" 」
そんな俺たちの様子を見た翔くんは
溜め息をつきながら、トラ兄にそう声をかける。
トラ兄は心配そうな目をこちらに向けたけど、
「 "ショウ、言いすぎないようにね" 」
と翔くんに短く言って、慌ただしく戻っていった。
「全く、マイクは本当に心配性なんやから…」
彼の後ろ姿を見送った翔くんの呟きで、
トラ兄もデトと同じように俺を心配して
くれてたんやな、って気づいた。
「 "リードも、先戻ってて" 」
先程よりも少しだけ柔らかくなった表情で
翔くんはそう言った。
そして、デトの肩をポンッて軽く叩いて
「 "史悠を心配してくれてありがとな" 」
と言ったのが、わずかに聞き取れた。
その翔くんの言葉に、デトはちょっと目を見開いて
驚いた顔をしたけど、すぐに首を横に小さく振って
行ってしまった。
ついに、この場は俺と翔くんの
2人だけになってしまった。
あー、さっきのこと怒られるんやろな…。
ダグアウトで騒いでいた時より、幾分も気持ちが
落ち着いていて、やや憂鬱な気持ち。
翔くんがわざわざ裏にまで来て、
2人きりの状況を作ったんやから、
それなりの説教を受けるんだろうと覚悟する。
恐る恐る翔くんを見上げると、
彼の手がスッと伸びてきて…
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作者名：天然水。 | 作成日時：2024年1月5日 17時
