ep.10.3 ページ8
トラ兄から離れる刹那、彼は心配そうな顔をして俺の頭を優しく撫でた。
トラ兄にそんな表情をさせてしまったことに
チクリと胸が痛んだ。
グシャグシャで混乱している心を落ち着けるため、
大きく深呼吸してみる。
翔くんが無事なら、それでよかったやん。
そう気持ちを落ち着かせて、元いた場所に
戻ろうとしたところで、デトに鉢合わせた。
デトは少し驚いたような顔をして、
俺を見つめていたけど、
『 "デトも裏に用事？" 』
と尋ねてみると
「 "…もう大丈夫なの？" 」
俺の質問をスルーして、質問返ししてきた。
一瞬不思議に思ったけど、
俺はすぐにデトの本心に気づいた。
話す前のちょっとした変な間と、不安気に曇った表情。
きっと…
デトは俺のこと心配して、来てくれたんだよね。
そんな優しい彼にこんな顔をさせちゃダメだと、
俺はデトの目を真っすぐ見つめ返して、
笑って彼の質問に答える。
『 "もう大丈夫！" 』
そしたらデトはあからさまに、ホッとした顔をした。
やっぱり心配してくれてたんやね。
デトの不器用な優しさに、俺の心が温められていく。
「 "ニヤニヤしないで" 」
無意識のうちに嬉しさが顔に出ていたのか、
デトが若干引いてる顔で俺を見る。
そんな表情も美しいよ、デト。
そんなことを思ったけど、これ言ったら
本格的に引かれるな、って思って自重する(笑)。
何はともあれ、バレてるんやったら
もう隠す必要もない、と
『 "デト、心配してくれてありがとう" 』
そう言って全力で彼にハグ。
ぎゅうぎゅうとカの限りハグ。
「 "シュウ!? 痛い、離して" 」
予想外の俺の行動に驚くデトを無視して、
胸に溢れた嬉しさをハグに詰め込む。
そんなことをしてると...
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作者名：天然水。 | 作成日時：2024年1月5日 17時
