The bunny2 (ページ7)

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ep.10.2 ページ7

グラウンドの土を踏む前に
俺を止めたのは、トラ兄だった。
怒っているような戸惑っているような、
そんな複椎な表情。

俺と目が合ったことを確認すると、
トラ兄は抱きしめていた腕を解いて、
今度は俺の両肩に手を置いて、
ジッと真剣な目で俺を見つめた。

「 "シュウ、落ち着いて。ショウには当たってない" 」
『 "ちょっと当たったかもしんないじゃん" 』
「 "大丈夫、デッドボール判定はされてない" 」
『 "でもッ！もし当たってなくても、
　心理的な影響があるかもしんないじゃん！" 』

優しいトラ兄の声に、少しだけ心が落ち着きを
取り戻しかけたが、言葉を重ねる度に
再び熱が戻ってくる。

トラ兄は、終始冷静に対応してくれてたけど、
俺の熱はなかなか収まりそうになかった。

俺が一方的に火花を散らしていると、

「史悠!!」
ドデカい声が俺の名前を呼んだ。

驚いて身を竦めて声をした方を見ると、
既に声の主は真っすぐな目で相手ピッチャーと
対峙している。

明らかにさっきの声には怒気が含まれていた。
一気に熱が冷めて、冷や汗がたらりと垂れる。

『 "翔くん、怒ってる？" 』
目の前にいたトラ兄に聞いてみると、

「 "めちゃくちゃね(笑)" 」
「 "bunny 騒ぎすぎ〜(笑)" 」

なんて、トラ兄以外のチームメイトが
ニヤニヤしながら口を挟んでくる。

『 "だって、翔くんにもしものことが
　あったらって…" 』
沈んだ気持ちでそう咳くと

「 "その気持ちはわかるけどさ" 」
「 "ちょっと頭冷やしてきな" 」

先程まで俺を茶化していたチームメイトたちが、
今度は至極真っ当な言葉を返してくる。
俺はそれに大人しく頷いて、裏に引っ込んだ。