ep.14.2 ページ33
『はい、尊敬できて誇れる最高の兄です』
キッパリそう言い切ると、一斉にカメラのシャッター音が鳴り響いた。
その音が止むのを待って、記者の人は今度は
翔くんにマイクを向ける。
「お兄さんは弟さんのこと、どう思われてますか？」
「彼の投げている姿を近くで見ていると、
自分も刺激されることは多いです。僕が成長する上で、
必要不可欠な存在だと思っています」
"必要不可欠な存在"
その言葉を聞いて、ニヤけそうになるのを必死に抑えた。
〜回想終了〜
「史悠、ずっとニヤニヤしてて気持ち悪い」
お風呂から出た翔くんが突然、辛辣な言葉を俺に放つ。
だけど、そんな言葉は今の俺には通用しない。
だって、そのくらいあの翔くんの言葉が
嬉しかったんやもん。
大好きな人に必要とされてる、って
ものすごく嬉しいことだよね！
特に翔くんが俺にデレてくれる(?)ことは、
滅多にないしね。
『ニヤニヤなんかしてないよ〜』
なんてニヤニヤを隠すことなく、
翔くんの隣にストンッと座る。
翔くんのガッシリ逞しい二の腕に、
ちょっとだけ頭を預けてみる。
こんなこと出来るのって、たぶん俺だけでしょ♪
みんなが羨ましがるだろうな〜！
ずーっとニヤニヤがおさまらない俺を見て、
翔くんはあからさまにため息をつく。
『ねぇ。もう1回、翔くんにとって
俺はどんな存在か言ってよ』
今度は二の腕にガッシリしがみ付いてダル絡みしてみる。
そのくらい、もう1回あの翔くんの言葉を生で聴きたい！
「無理！あー…あんな事言うんやなかった...」
翔くんはもうほんまにウンザリした様子。
でも、今の俺はそんなことではめげません。
気にせず『お願い、もう1回！』って諦めずにせがむ。
翔くんもなかなか頑固なもんで
「嫌！」って、絶対に言ってくんない。
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作者名：天然水。 | 作成日時：2024年1月5日 17時
