The bunny2 (ページ22)

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ep.12.4 ページ22

「は？俺が着るん？」
てっきり自分の服を見ているのかと
思っていたが、そうではないらしく...

『そう、翔くんが着んの！雑誌で見てさ、
　これ絶対翔くんに似合うと思ったんだよね♪』

服と俺を交互に見ながら、
屈託のない笑顔を振り撒く史悠。
我が弟ながら、やはり可愛い。

心の中で史悠を愛でていた俺だったが、
手早くワンサイズ上の服を持ってきてもらった史悠に、
半ば強引に試着室へと押し込められた。

試着した服は史悠が大絶賛して、買うことに。
一方、史悠は史悠で自分の服を試着していたようで、
暫く二着を見比べて迷っている。

「どっちも買ってあげるよ？」
真剣に悩む弟を、始めは面白半分で眺めていたが、
なかなか決断できないようで…。

俺がそう提案すると、史悠はゆるゆると首を横に振る。
そして…

『こっちにする！』
と勢いよく言って、俺が購入予定の服を奪い取って、
一緒にレジへと持って行ってしまった。
その勢いに呆気に取られていたが、
急いで彼の後を追ってレジへと向かう。

「俺が払うよ」
史悠の隣に立って、財布を取り出しながら
そう声をかけると、

『ええよ、俺が翔くんにプレゼントしたいから』
サラッと断られる。

いつもとは違う弟のカッコ良さに、
ちょっと胸がトキメキかけたけど、そうはいかん、
と改めて断る。

…と、

『翔くんには、いつもマウンドに上がる時に
　勇気を貰っとるし、その他にも色々。
　だから、これはそのお礼だと思って、
　受け取ってほしい』

そう真っすぐな目で見つめられてしまえば、
俺はもう黙る他なかった。

だけど…俺は史悠のために何かした覚えはない。
でも、俺のプレーを見て、史悠に何か与えられて
いるのであれば、それはそれで嬉しい。

俺も史悠が投げている姿を見ると、援護したい、
1つでも多く塁に出たい、という思いが
より一層強くなる。
そう考えると、俺と史悠は対等に、
互いから何かを得られているのかもしれない。

だったら、俺も……。