ep.12.1 ページ19
【翔平side】
ヒューストンからの帰り道。
フライト中に疲弊した体を少しでも休めようと、
仮眠の体勢に入る。
隣に座る史悠は、それほど疲れが溜まっていないのか、
楽しそうな表情でファッション誌を広げている。
そんで時おりページの端っこを
折り曲げちゃったりしてる。
明日は1日オフだから、買い物にでも行こうと
しているのかもしれない。
そんな楽しげな弟を横目に、俺は瞼を閉じた。
『翔くん、まだ起きんかな〜？』
意識が覚醒しきらない、微睡みの中で
聞こえたのは史悠の声。
もう少し寝ていたい気もするけど、頬のあたりを
ツンツン突かれて、二度寝する気も失せる...。
無言で頬を突いてくる史悠(であろう)の
手首を掴んで阻止する。
『あ！翔くん起きた？』
嬉しげに弾む声を聞きつつ、ゆっくり目を開けると...
視界いっぱいに史悠の顔。
「ぉわッ!!」
あまりの近さに驚いて飛び起きようとすると…
ゴチンッ
史悠と結構な勢いでおでこ同士がぶつかった。
『いったぁー!!』
自分のおでこの方が頑丈だったのか、
俺はそこまで痛みを感じなかったが、史悠は痛みに悶絶。
「わりィ!!大丈夫か？」
掴んだままだった手首をこちらに引き寄せて、
赤くなってしまった史悠のおでこに
出来るだけ優しく触れる。
やばっ…思ったより赤くなってる！
「一平さん！一平さん！」
赤くなった史悠のおでこを冷やすために、
声を上げて一平さんにヘルプを出す。
「えぇ!?氷?」
俺のヘルプに、一平さんは焦った声をあげて
暫くバタバタ。
そんな彼を横目に、史悠はあっけらかんとした様子で
『翔くん、明日ちょっとだけでいいから買い物行こ！』
俺に厄介な提案をしてくる。
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作者名：天然水。 | 作成日時：2024年1月5日 17時
