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ep.11.3 ページ14

そうやって少しだけ浮かれていると、
チラリと視界の隅に映った翔くんの姿。
俺のピッチングを褒めてくれる輪の中には
入っていなくって、ベンチの端っこで静かに
バットと向き合っている。

そんな真剣な瞳に、俺はまた気持ちが引き締まった。
そうだ、ゲームはまだ終わっちゃいない。

この回で点を取らなければ、
延長戦にもつれこんでしまう。
できれば、この回できっちり終わらせたい。

『 "まだ終わってないよ!勝たなきゃ意味がない" 』
輪の中心で少し大きい声で言ってみると

「 "bunnyに言われなくてもわかってるさ" 」
「 “絶対勝つ!” 」
みんなの頼もしく力強い声が返ってきた。

そんなみんながキラキラして見えた。
点をとってこの回で勝って終わる、
本当にそうなる気がした。

『 "信じてるよ" 』
そう言ったら、みんな大きく頷いて
とびっきりの笑顔をくれた。

嗚呼、俺このチーム大好きだな。
決して強いチームではないけど、
あったかいこのチームが好きだ。

輪が散らばって、ベンチで一息ついていると、
打席に立つ準備を終えたトラ兄がスッとやってきて、

「 "シュウ、最高にエキサイティングな
 ピッチングだったよ。
 シュウの頑張りを無駄にはしないから" 」
と言って、俺にグータッチを求める。

トラ兄は自身が最高のバッターにも関わらず、
こうやって真っすぐにキラキラした瞳で
賛辞の言葉をくれる。

こういうところが大好きだ。
どうしようもなくリスペクトできる、
最高のスーパースターだ。

俺はニッと笑って、コツンと彼のグータッチに応える。

『 "絶対、勝って終わろうね!" 』
そう言ったらトラ兄も白い歯を見せて笑って、
グラウンドへと向かっていった。

その背中がいつもより大きく、
そして頼もしく、キラキラ輝いて見えた。

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作者名:天然水。 | 作成日時:2024年1月5日 17時

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