ある日のお出掛け(前編)3 ページ26
えぇこと思いついたわ(笑)
心の中でそう呟いて、俺はニヤリと笑った。
有志はそんな俺に気付くはずもなく
俺に背を向けたままスマホをいじっている。
ちゃんとタピオカ調べよるんかなー?
なーんて思いながら、俺はゆっくり慎重に有志に近寄っていき…
彼の大きくガッシリと逞しいその背中にのしかかった。
「うわっ!千紘、何してんねん!」
急に背中に掛かった重みに彼は驚いて声を上げた。
思いのほか大きかった彼の声量に俺も驚き
「シーッ」と言いながら、慌てて彼の口を塞いだ。
彼はモゴモゴと口を塞がれつつも何かを訴えていたが
しばらくすると大人しくなった。
…かと思ったら、持っていたスマホをポイッと放り出して
その空いた手で自分の口を押さえていた俺の手を掴んだ。
あ、と小さく声を上げた時には、俺は既にベッドの上で彼に組み敷かれていた。
めちゃくちゃ無駄がない鮮やかな動きだった。
俺は思わず感嘆の声を漏らす。
「有志すげえな!柔道かなんかしとったん?」
ちなみに柔道は咄嗟に出てきた言葉で、
さっきの有志の技に関係があるとかは知らん(笑)
彼に問いかけるも、彼は俺の目をジッと見つめたままで口を開く様子がない。
ただ俺の手首を掴んでいる彼の手の力が
少し強まった気がした。
俺は"またか"と心の中でぼやいた。
俺の目を見つめる有志の瞳は
肉食獣が獲物を捕らえる時のそれに似ていた。
ギラギラと熱く鈍い光を放つ瞳。
有志はたまにそういう目で俺を見てくる時がある。
彼のなにがそうさせてるんかは、俺には全くわからんけど…。
でも、俺は被捕食者ではないし
もちろん彼も俺を捕食するわけではない。
だから特に恐怖なんてものは感じるわけもなく。
俺はこの状況をプラスに変える術を持っていた。
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作者名:天然水。 | 作成日時:2019年11月24日 22時