Secret No.5『おはよう零℃世界』 ページ14
私、ついに気づいてしまった。
隣から消しゴムが落ちた音がして、眠気は一気に消え去った。
黒板に書かれた単語の数々と先生が話している内容からして、確かこの時間は日本史。先生は変に手の込んだ話し方をして偉人たちの活躍ぶりを熱弁してるのはいいけど。全く惹かれない。髪の毛先をシャーペンでくるくると巻き付けた。あ、最近爪の手入れもしてないや。あくびは大きいし机の下で携帯をいじるし前を見ていないことをわかっているのに授業を続けて、先生には何一つメリットがないのに。現代っ子の私たちは一回意見が合わなければすぐ病んじゃうし。頑張るね、先生だけこんなことはしてればいいよ。
隣から聞こえる微かな寝息とさっき落ちてから少し経っても体が動かない隣のこいつ。に、ちらり視線を見やる。カーテンが揺れて彼を包み込んでいくように風がスペースを作っていく。このまますっぽりと収まってしまいそうだ。シャーペンもノートから逃げるように床へ向かって降下を始めた。
さて、そろそろ彼を起こそう。
「____しまちゃん、起きて」
「ん、んん……まだ寝る……」
「しまちゃん、起きて」
「先生いるんだよ目の前に……!」
先生が彼、志麻に怒りを口に出すまで。あと何秒か数えたくもない。
起こしたから、私の役目はもう終わりと前を向いた。
「あ」
ノート、何も写してなかった。
いけないいけない。まず、今日の日付から書かないと。
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