15.歩道 ページ16
何故走る？
何故彼から逃げる？
なんで私は、
また同じ過ちを、繰り返す？
狂い出した歯車を、
止められるものなど、
何処にもいない。
決められた結末を、
変えようとすれば、
それなりの代価を
支払わなければならない。
『命と引換に、
差し出すものは＿＿?』
ズキズキと痛む胸、
零れ落ちていく涙、
緊張感に圧迫される様な、
まるで過呼吸を起こしているかのように、
呼吸がままならない。
｢＿＿＿A！｣
周助の、声。
追いかけてくる、迫ってくる、
現役運動部なのだから、
それは、当然のことであって。
｢…っ…｣
何も私は、返さない。
振り返らない。
ごめんなさい、
ごめんなさい。
弱くて、何も出来なくて。
｢A！！！｣
叫ぶ周助の声に、
緩む、私の速度。
嗚呼、なんで呼ぶの、
なんで引き止めるの？
私は君に＿＿＿
｢…周助！！！｣
これは偶然なのか、
それとも必然なのか。
前を進むのをやめ、
彼の元へと走り出した私は、
彼の腕を掴んで、
自分の方へと、引き寄せた。
｢…か、間一髪、だったね、｣
カメラ屋の目の前、
歩道に居るのは、私と周助
少し離れた場所に、
突っ込んでいる、乗用車。
｢はあ、A、あの｣
｢良かった……｣
｢え？｣
｢こっちの、話……｣
安心したと同時に、
零れてくる、大粒の涙。
彼は、助かったのだ、
間一髪の所で、
私が、引き寄せた事により。
｢ありがとう、A。｣
｢うん、ごめんね、本当にごめんなさい…｣
｢なんで謝るの？｣
｢迷惑かけました…｣
ふふ、と笑う彼に、
私は腕を回して抱きついた。
温かい、優しいかおり。
｢＿＿じゃあ、
もう真っ暗だし、
早く家に帰ろうか。｣
｢うん、そうだね。｣
じゃあ、と
再び繋ぐ、二つの手。
私はもう、
1人じゃない。
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