14.予想もできない様な ページ15
｢A。｣
｢なあに、周助？｣
｢ココ最近の君は、
何に一体怯えていたの？｣
｢え……？｣
無意識に、彼から視線が逸れた。
｢そうやって逸らすってことは
図星って事なんだね？
ねえ、何を怖がってるの？｣
ピタリ、と止む足音。
私を見据える彼の瞳。
怖くない、だなんて言葉は
彼には通用しない。
彼に嘘は、きかないから。
だからと言って、
此処で真実を話してどうなる？
彼は生きることが出来るのか？
そもそも、私はどう彼を助ける？
ひやり、とした冷や汗が、
頬を伝っていくのがわかる。
言いたいのに、
言えない、真実。
｢答えられないこと……？｣
私がなかなか答えないからか、
不安げな声が、飛んでくる。
ぎゅっ、と握りしめた拳。
口は開いても、
声が、出ない。
｢ねえ、A、
言ってくれなきゃ僕は、
何もすることできないよ？｣
そんなに悲しそうな声を出さないで。
泣きそうな瞳で、私を見つめないで。
黙っているだけでは、
何も変わらないというのに。
時間は刻一刻と、
迫ってきているのに、
｢……そっか、
僕にも言えない事なんだね。
ごめんね、今の言葉忘れて？｣
｢あ、｣
｢言いたくないのに、
無理やり言わそうとしてごめんね。｣
違う、違うのに。
否定することは愚か、
｢行こうか、｣と、
また差し出してくれたその手を、
握ることさえ、出来ない。
誰が想像するだろう、
自分の恋人が悩んでいることが、
自分の死ぬ未来、
だなんて。
｢ごめんなさいっ……｣
彼の顔を見ず、
顔を俯けたまま、
私は走り出した。
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