今日:4 hit、昨日:1 hit、合計:18,761 hit
小｜中｜大
1.懐中時計 ページ2
･
涙が張り付いた頬は少しヒリヒリとする。
嗚呼、
泣いたって、
悔やんたって、
何も帰ってこない、
何も変わらないというのに…
顔を上げると、機械に繋がれた恋人が、今もまだ寝ている。
私の恋人、不二周助は、
二か月前、交通事故で
こうして病院で眠り続けている。
｢周助…｣
ぽつり、とその名前を零しては、
歪む視界に、また、嗚咽を漏らす。
ポケットから、
私はあるものを取り出した。
それは、『懐中時計』
事故の際に壊れ、ヒビが入って動かなくなっている
｢あの日から、時が進まないね……｣
時計に語りかけるように、
私はそう呟く。
外を見ると、
さっき降り出したばかりの雨が、
強く、降り出していた。
進まないものは、
時間と生命の流れ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 19人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
