彼の持論は世界を救う ページ28
・
目を丸くしている私の隣まで来たかと思ったら、着ていたシャツを脱いで私の肩にそっと掛けた。嬉しい、というより驚いた 怒ったと思ったから。
『え、これいいの』
「見てるこっちも寒い」
『、ありがとう』
「溶けるよ、アイス」
照れ隠しなのかこの部屋気温ではすぐには溶けないであろう私のソフトクリームを指さして言った。
私が知らないうちに 彼は紳士になっていたらしい、驚いた後に不覚にもドキドキしてしまった。恋愛映画を見ている時のあの感覚と同じで 私もちょろいなと思った。簡易的に肩に掛けられたシャツの袖に手を通すととしみつの香水の香りがほのかにした きっとこれはまたどこかの有名なブランドの高い服だ。
「俺」
また向かい側の席に座り直したとしみつは ソフトクリームに再び口を付け始めた私を見ながらさっきの会話よりも少し大きめの声で言った。心做しかいつもより低いその声に、無意識にビクッとしてしまった私を見てとしみつが頭をかいた。...怒った?
「俺、そんな怖い?」
としみつがこんなにも優しくしてくれた状況でも私が必要以上に怖がっていたのに気付いたのかもしれない、というかきっとそうだ。としみつが私が思っているより怖い人ではないのは知っている。面白いし誠実だし優しい、オマケに世間ではイケメンと言われる部類に入る人気者だ
『いや、』
「なんでそんな顔すんの」
だけど私の変な先入観が邪魔をするのか。
はたまた私はとしみつタイプの人間が得意ではないのか。
としみつは笑っていたけど傷付いた顔をしていた。いくら初対面の印象が最悪で、短気な所があるからとはいえ私は怖がりすぎだ 分かっている。出会った当時から これ以上距離が離れないように、嫌われないように接しているうちに結果的に彼を避ける事になっている、上手くいかないのだ これじゃあこの先もずっといたちごっこを続ける事になる。
『としみつが怒ると、怖い』
「俺そんな怒らんやん」
『皆に比べたら怒る』
「それはアイツらが可笑しいんだよ、俺は正論を言ってるだーけ」
持論だけど 反抗する言葉も見つからなくて「何それ」と誤魔化した。彼の持論は時として、動画としての一番の見所を作ったりもする、虫さんが言っていたように動画のクオリティが下がり気味な時はとしみつの言葉にピックアップすれば何となくそれらしくなったりするのだ、彼は面白い。
そろそろ溶け始めそうなソフトクリームを慌てて舐めた。
1708人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
まりこ - 移行まだですかー!笑笑 ずっとまってます… (2019年3月12日 2時) (レス) id: 433cc2ff51 (このIDを非表示/違反報告)
タルヒ(プロフ) - このゆったりとした雰囲気すごく好きです!主人公が謙虚なのも好感!更新楽しみです。頑張って下さい! (2018年12月23日 10時) (レス) id: d9b43e6eea (このIDを非表示/違反報告)
みお(プロフ) - コメント失礼します!続編ありがとうございます!とても楽しみにしてました^ ^ (2018年12月9日 0時) (レス) id: 3c35cfd113 (このIDを非表示/違反報告)
みずれ - コメント失礼します!いつも楽しく読ませていただいています。そして、あっていたらすみませんが、「私たちの高校時代」のお話で、てつやの元カレになってしまっています。m(__)mあっていたらすみません!これからも更新楽しみにしています! (2018年9月30日 12時) (レス) id: a68df7c0fe (このIDを非表示/違反報告)
菖蒲 - 初コメ失礼します!とても面白くきつもキュンキュンさせてもらっています!(小並感)これからも更新楽しみに待っています! (2018年8月28日 17時) (レス) id: 07dc2dc5de (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:なぁちゃる | 作成日時:2018年7月20日 23時