四十五話 ページ50
「あぁ、心配したんだよ。近くで鬼が出て、子どもが襲われたと聞いたから」
「さぁ、早く家へ帰ろう」
仮の両親は、やけに体をべたべたと触る。
不愉快極まりなかったが、私は再び笑顔を見せて頷いた。
「…おや、君は」
だが、両親はAの姿を見るなり、足を止める。
Aは目を見開き、二人を見つめた。
「俊國のお友達かしら?」
「綺麗な子ねぇ。西洋のお人形のようだわ」
「としくに?」
怯えたような、不安げな表情でこちらを見つめてきたが、黙って目を逸らす。
「お家の人はどうしたの?外は危険よ」
母親が近づくと、Aは咄嗟に身体を跳ねらせ、私の元へと駆け寄った。
「おうちのひとはね…」
「この子は迷子です」
「私を家族の誰かと勘違いし、後をつけて来てしまったようで」
万一を考慮し言葉を遮ったが、何故かAは硝子玉のように目を輝かせる。
「まぁそれは大変、お家の人の連絡先はわかる?」
「うん!わかる」
「だったら家へおいで。電話を貸してあげるから」
「外は危険だ。また鬼が出るかも知れない」
「おに?」
「そうだよ。怖い鬼だ」
父親は、手を擦り合わせながら足を進める。
本意ではなかったが、この場でAの同行を拒むのも不自然であり、やむを得ず私もその後を追った。
「鬼なんて、誰かの作り話だと思っていたよ」
「つくりばなしじゃないよ」
「おにはね、やさしいんだよ」
思いきり睨みつけるが、Aは気付かない。
何故自ら墓穴を掘るような馬鹿な真似をするのか
私の血を受け継いでいるのかつくづく疑問だった。
「優しい?そんな訳がないよ」
「あんな恐ろしい化け物が」
隣の小さな瞳が、小刻みに揺れる。
何か言いたげな顔をしていたが、Aは口を尖らせながら下を向き
「ちがうもん」
消え入りそうな声で、そう呟いた。
両親には届いておらず、こちらを振り返ることなく進んでいく。
「ばけものじゃ、ないもん」
小さな手が、弱々しく私の手を握ってきた。
振り払うのはひどく面倒で、そのまま放っておいた。
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(ねこたん ・∇・ - 「私を見下せたのがそんなに嬉しいか」にツボってます(( (2月25日 21時) (レス) @page4 id: f02fa02e3e (このIDを非表示/違反報告)
ゆき - 無惨と夢主が微笑ましすぎてつらい、気付かないうちに口角が釣り上がってしまいました! (2月18日 23時) (レス) @page43 id: e2553842fc (このIDを非表示/違反報告)
黒蝶(プロフ) - 皇帝の一人娘みたいな感じがあって好き (2022年8月9日 19時) (レス) @page5 id: 59c4260589 (このIDを非表示/違反報告)
おむれつ(プロフ) - 茨の谷の第二王子さん» 鬼滅の刃の漫画を拝読させていただいた際に鬼舞辻無惨が自らがいる場(無限城や遊郭など)では名を呼ばれても呪いを発動していないシーンが見受けられましたので、本作もそのようにさせ頂きました (2022年2月16日 21時) (レス) id: b911301b3c (このIDを非表示/違反報告)
おむれつ(プロフ) - 星さん» ありがとうございます!返信遅れてしまい誠に申し訳ありませんでした!これからも頑張って更新させていただきますので何卒よろしくお願いします! (2022年2月16日 21時) (レス) id: b911301b3c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:もきゅもきゅ | 作者ホームページ:http://mokyumokyuuu
作成日時:2019年12月27日 21時