四十話 ページ43
「おとうさん！！あげる！！」
私は帰ってくるなり、椅子で本を読んでいた父の元へと走った。
「何だ」
「ひがんばな！！」
父は私を見るなり優しく微笑みかけてくれた。
「ほう…本当に見つけてきたのか。私が千年もの間探し続けたものを…！」
「お前は大した娘だ。私の自慢だな」
そして私の頭を撫で、柔らかく包み込むように抱きしめた。
父の温もりが伝わると同時に、胸がちくりと締め付けられる。
私は父の腕を退けると、俯いた。
父はがっかりしてしまうだろうと怖かった。
「ちがうの。これね、ほんものじゃないの」
「ぎょっこにぬってもらったの」
「ほんものじゃないけどね、あげたかったの」
指先が小さく震えるのがわかった。
父は怒るだろうか。形だけのものなど必要ないと。
ぬか喜びをさせるなと。
「……ふん」
「正直に言うとはな。その姿勢は褒めてやろう」
「嘘でも吐こうものなら殺してやろうと思ったが」
顔を上げると、父は先程とは打って変わって意地の悪い笑顔を浮かべていた。
「おとうさん、しってたの？」
「私に隠し事など出来ると思っているのか」
父は彼岸花を受け取ると、机の上の明かりへとかざした。
深い青色の花弁一つ一つに光が反射し、美しく輝いていた。
「…まるで本物のような出来だ」
父はぽつりと呟いた。
余りにも切ない横顔に、思わず見入ってしまう。
父の雪のように白い肌が橙色の光を帯びる。
とても綺麗だけれど、口に出すと父は気を悪くするだろうから、ただただ眺めていた。
父は毎日休むことなく太陽の光を克服する手段を探していた。
大量の医学書を読み漁り、薬の調合や治験を行い、青い彼岸花を探し続けていた。
千年もの間、ずっとそうしていたのだろう。
私は椅子に飛び乗り、父の頭を撫でた。
父は一瞬だけ肩を跳ねさせて、眉間に皺を寄せる。
「触るな」
「おとうさん、えらいね」
「偉いだと？何様のつもりだ」
「貴様なんぞに褒められた所で嬉しくも何ともない」
そしてそのまま父に抱きつくと、「触るなと言ったのが聞こえなかったのか」「お前の耳は飾りか」と様々な暴言が飛んでくる。
だが、構わず抱きついていると、そんな言葉さえも聞こえなくなった。
目を閉じると、父の心臓の音が聞こえる。
それがひたすらに心地よくて、温かくて、疲れているのも相まってか次第に眠気が襲ってくる。
遠のく意識の中、父の大きな手が頭に置かれるのを感じた。
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(ねこたん ・∇・ - 「私を見下せたのがそんなに嬉しいか」にツボってます(( (2月25日 21時) (
レス) @page4 id: f02fa02e3e (このIDを非表示/違反報告)
ゆき - 無惨と夢主が微笑ましすぎてつらい、気付かないうちに口角が釣り上がってしまいました！ (2月18日 23時) (レス) @page43 id: e2553842fc (このIDを非表示/違反報告)
黒蝶(プロフ) - 皇帝の一人娘みたいな感じがあって好き (2022年8月9日 19時) (レス) @page5 id: 59c4260589 (このIDを非表示/違反報告)
おむれつ(プロフ) - 茨の谷の第二王子さん» 鬼滅の刃の漫画を拝読させていただいた際に鬼舞辻無惨が自らがいる場(無限城や遊郭など)では名を呼ばれても呪いを発動していないシーンが見受けられましたので、本作もそのようにさせ頂きました (2022年2月16日 21時) (レス) id: b911301b3c (このIDを非表示/違反報告)
おむれつ(プロフ) - 星さん» ありがとうございます！返信遅れてしまい誠に申し訳ありませんでした！これからも頑張って更新させていただきますので何卒よろしくお願いします！ (2022年2月16日 21時) (レス) id: b911301b3c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：もきゅもきゅ | 作者ホームページ：http://mokyumokyuuu
作成日時：2019年12月27日 21時
