四話 ページ5
無惨様はここ数ヶ月、ほぼ毎日無限城に足を運ばれる。
A様に会うために。
今現在も、数冊の厚い本を持って部屋を訪れ、A様を膝に乗せ黙々とお読みになっている。
A様も満足そうに笑みを浮かべ無惨様にもたれながら本を見つめている。
時折無惨様は「これが青い彼岸花だ」「この花は鬼にとって毒の成分を多く含んでいる」など、所々A様に語りかけていた。
A様はおそらく何も理解しておられないが、無惨様に語りかけられるのが喜ばしいようで、声を上げて笑っている。
無惨様がA様を生かしておくという判断をなされたのには肝を抜かした。
無惨様はA様を殺めるどころか、お見受けする限りでは無惨様なりに寵愛されているようにも思われる。
機嫌が悪かろうが、A様に暴力を振るったり、八つ当たりをすることはなく、態度こそ素っ気ないが接触を本気で嫌がってはいない。
その光景は、時折血の繋がりがある故の温かさを醸し出しているようにも見えた。
「あぅあ」
A様は無惨様の身体によじ登り、懸命に声をかける。
私達のような無惨様の配下にある鬼からすれば血の気の引くような行為であったが、当然赤子にはそのような恐怖心はない。
「あぅあ！」
「黙れ。誰が喋って良いと言った」
そして無惨様が凍りつくような視線で睨むと、A様は嬉しそうにケラケラと笑い声をあげる。
その様子を見て嫌味たらしく溜め息をつかれると、無惨様は再び本を読む手を進められる。
A様はやはり本能で父親だと理解しているのか、無惨様にとてもよく懐いていた。
「下りろ。私はもう行く」
無惨様が本を閉じ、立ち去ろうとすると、A様は目に溢れんばかりの涙を溜める。
そして、無惨様の衣服にしがみついた。
「離せ」
無惨様にあしらわれたA様が、声を上げて泣き出してしまうと、無惨様は心底不可解な顔をされる。
「お前は何故私がまた明日来るとわかっていながら泣くのだ」
「まるで理解ができない」
「記憶力に問題があるのか」
今日に限らず、A様は無惨様が部屋から立ち去った瞬間に、まるでこの世が終わりを迎えたような泣き声を上げている。
無惨様がその場にいなければ、数分寝かしつけるのにすら相当な時間を要する、手間のかかる鬼であった。
「静かにしろ。不愉快だ」
しかし、無惨様が抱き上げた途端に、一瞬にしてA様の機嫌は直ってしまう。
やがてA様が眠ってしまうと、無惨様は夜の世界へ出かけていく。
まるで微笑えましい親子のようであったが、それを口に出せばひどい叱責を食らうだろう。
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(ねこたん ・∇・ - 「私を見下せたのがそんなに嬉しいか」にツボってます(( (2月25日 21時) (
レス) @page4 id: f02fa02e3e (このIDを非表示/違反報告)
ゆき - 無惨と夢主が微笑ましすぎてつらい、気付かないうちに口角が釣り上がってしまいました！ (2月18日 23時) (レス) @page43 id: e2553842fc (このIDを非表示/違反報告)
黒蝶(プロフ) - 皇帝の一人娘みたいな感じがあって好き (2022年8月9日 19時) (レス) @page5 id: 59c4260589 (このIDを非表示/違反報告)
おむれつ(プロフ) - 茨の谷の第二王子さん» 鬼滅の刃の漫画を拝読させていただいた際に鬼舞辻無惨が自らがいる場(無限城や遊郭など)では名を呼ばれても呪いを発動していないシーンが見受けられましたので、本作もそのようにさせ頂きました (2022年2月16日 21時) (レス) id: b911301b3c (このIDを非表示/違反報告)
おむれつ(プロフ) - 星さん» ありがとうございます！返信遅れてしまい誠に申し訳ありませんでした！これからも頑張って更新させていただきますので何卒よろしくお願いします！ (2022年2月16日 21時) (レス) id: b911301b3c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：もきゅもきゅ | 作者ホームページ：http://mokyumokyuuu
作成日時：2019年12月27日 21時
