ー番外編ー �� ページ35
無限城に赤子の泣き声が響きわたる。
世話を任せている鳴女は今人を食うため席を外している。
「黙れ！殺されたいのか貴様」
気にしないようにしていたが、余りに煩くAの部屋へと足を踏み入れる。
布団の上に座り泣き叫んでいたAは私を見つけるなり両手を伸ばしながら涙を零す。
「……はぁ…」
渋々慣れない手つきで抱き上げると、一瞬にしてぴたりと泣き止んだ。
「…何だ。嘘泣きでもしていたのか？」
「気色の悪い餓鬼だ」
引き剥がそうとしたが、小さな爪を私の服へくい込ませ、離れないようしがみついている。
「離せ。両腕をちぎり取るぞ」
だが、爪を服から抜いた途端Aは再び大きな泣き声をあげる。
苛立ちつつも、静かにさせるため再び身体を抱き寄せた。
「この小さな身体のどこからあの声量が出ている」
無限城の壁は決して薄くはない。むしろ分厚い方だ。
私とAの位置からして赤子の泣き声などあんなにも大きく聞こえる筈がない。
「お前は私を呼んでいたのか？」
返事がくるわけはないが、Aは代わりに私の顔に向かい手を伸ばす。
小さい手のひらが頬に触れる。
「生憎だが、私がお前を愛することはない」
「私の元へ産まれてきたのが運の尽きだ」
「私のために強くなり、私のために鬼狩りを殺せ。お前はその為に生まれてきたも同然なのだ」
腕の中の赤子は人差し指を咥えると、硝子のように澄んだ赤い瞳で私の顔をまじまじと見つめる。
「ふん、怯えているのか？」
「私にとってお前の息の根を止める事など朝飯前だ」
だが、Aは不意に口元を緩めにんまりと柔らかい笑みを浮かべる。
「…憤りを感じる笑顔だ」
指で頬を弄り回した後布団に寝かせると、Aは再び私の顔を凝視した。
「…」
指を近づけると、Aはなんの躊躇いもなく私の手を握り笑い声を上げる。
「愚かな娘だ。哀れにすら思えてくる」
私は猫のように狭い額に口吸いをすると、Aの身体へ布団を被せる。
「精々私の役に立てるよう、早く成長する事だ」
「命が惜しければな」
どうせ私が離れたら泣くのだろう。何時ものことだ。
二度手間は御免だと、鳴女が戻るまでの間布団の横へと腰掛ける。
暫くそうしていると、部屋に微かな寝息が響く。
眠っている間もAはずっと私の指を強く握りしめていた。
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(ねこたん ・∇・ - 「私を見下せたのがそんなに嬉しいか」にツボってます(( (2月25日 21時) (
レス) @page4 id: f02fa02e3e (このIDを非表示/違反報告)
ゆき - 無惨と夢主が微笑ましすぎてつらい、気付かないうちに口角が釣り上がってしまいました！ (2月18日 23時) (レス) @page43 id: e2553842fc (このIDを非表示/違反報告)
黒蝶(プロフ) - 皇帝の一人娘みたいな感じがあって好き (2022年8月9日 19時) (レス) @page5 id: 59c4260589 (このIDを非表示/違反報告)
おむれつ(プロフ) - 茨の谷の第二王子さん» 鬼滅の刃の漫画を拝読させていただいた際に鬼舞辻無惨が自らがいる場(無限城や遊郭など)では名を呼ばれても呪いを発動していないシーンが見受けられましたので、本作もそのようにさせ頂きました (2022年2月16日 21時) (レス) id: b911301b3c (このIDを非表示/違反報告)
おむれつ(プロフ) - 星さん» ありがとうございます！返信遅れてしまい誠に申し訳ありませんでした！これからも頑張って更新させていただきますので何卒よろしくお願いします！ (2022年2月16日 21時) (レス) id: b911301b3c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：もきゅもきゅ | 作者ホームページ：http://mokyumokyuuu
作成日時：2019年12月27日 21時
