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二十八話 ページ30

目を覚ますと、父はいなかった。


急いで起き上がり城内を探し回っていると後ろから身体を持ち上げられる。



「あかざ!」



「なんだその顔は」


「目がぶっくりと腫れているじゃないか」



そのまま肩車をする形で私を乗せると猗窩座は無限城の一室へと向かった。



「おとうさんは…?」



「無惨様はお仕事に出掛けた」


「俺がお前の面倒を見ていろと言われたんだ」



「おとうさんがいい…」



「我儘を言うな」



昨夜の余韻もあり再び目から涙が溢れ出す。

すると猗窩座は私を下ろし、頬杖をついて私の顔をまじまじと見つめた。



「それ以上泣けば目が開かなくなるぞ」


「やだ!」



急いで涙を拭うと、突然猗窩座はにっと口角を上げ腕立て伏せを始める。



「暇なら俺の背中に乗れ」



言われるがままに背に乗ると、猗窩座は引き続き腕立て伏せをした。その度にぐらぐらと身体が揺れる。



「何をめそめそとしている」


「まだ無惨様を恋しがっているのか?」



「…」



「何とか言え」



「……るい、しんじゃった」



「るい?…あぁ、下弦の伍だったか」


「無惨様が気に入っておられたな」



うじうじと涙を流していると猗窩座は腕立てを止め、私を背中から下ろしにやりと笑う。



「お前に良い事を教えてやろう」


「下弦の伍が死んだ理由は他でもない。弱いからだ」



「弱き者は強き者に取って食われる。これこそが自然の摂理でありこの世の理だA」


「泣いている暇があったら強くなる鍛錬の一つでもしたらどうだ?そうすれば下弦の伍の仇を取れる」




唇を尖らせ俯くが猗窩座は気にもとめずに腹筋を鍛え始める。



「お前には充分すぎる程の素質がある」


「気が向いたら言うといい。俺が何時でも相手をしてやろう」



楽しみだと笑う猗窩座を横目に床へと座り込む。



鳴女は無限城の散策をしていたのかこの日は姿が何処にも見当たらなかった。




「Aね」



少しだけ身体を大きく変化させると口を開いた。


服がキツくなり、身体に負担はかかるが舌の筋肉が発達するためこの方が思ったことを上手く言葉に出せるのだ。



「擬態の精度は大したものだな。あの方譲りか」



「…A」


「お父さんと、鳴女と、鬼のみんなと」


「ずっといっしょにいたい」



「強くなりたいわけじゃない」




頬に涙が伝い、唇が震える。


そんな私を見て猗窩座は呆れたように私の頭を乱暴に撫でた。

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設定タグ:鬼滅の刃 , 鬼舞辻無惨 , 無惨
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(ねこたん ・∇・ - 「私を見下せたのがそんなに嬉しいか」にツボってます(( (2月25日 21時) (レス) @page4 id: f02fa02e3e (このIDを非表示/違反報告)
ゆき - 無惨と夢主が微笑ましすぎてつらい、気付かないうちに口角が釣り上がってしまいました! (2月18日 23時) (レス) @page43 id: e2553842fc (このIDを非表示/違反報告)
黒蝶(プロフ) - 皇帝の一人娘みたいな感じがあって好き (2022年8月9日 19時) (レス) @page5 id: 59c4260589 (このIDを非表示/違反報告)
おむれつ(プロフ) - 茨の谷の第二王子さん» 鬼滅の刃の漫画を拝読させていただいた際に鬼舞辻無惨が自らがいる場(無限城や遊郭など)では名を呼ばれても呪いを発動していないシーンが見受けられましたので、本作もそのようにさせ頂きました (2022年2月16日 21時) (レス) id: b911301b3c (このIDを非表示/違反報告)
おむれつ(プロフ) - 星さん» ありがとうございます!返信遅れてしまい誠に申し訳ありませんでした!これからも頑張って更新させていただきますので何卒よろしくお願いします! (2022年2月16日 21時) (レス) id: b911301b3c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:もきゅもきゅ | 作者ホームページ:http://mokyumokyuuu  
作成日時:2019年12月27日 21時

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