ずるい人 fkr ページ35
あなたは無責任だと思う。
「ごめん」
申し訳無さそうな顔して目を伏せる。
私が人一倍気まずい空気が苦手なこと知ってるくせに。
「全然、大丈夫!逆にごめんね、なんか気を使わせちゃって……」
本当は全然大丈夫なんかじゃなくて、今すぐにでも泣きたい。
胸が張り裂けそうで、苦しくて苦して。
それでも、痛みを誤魔化したくて笑う。
思わせぶりな言動ばかりして、散々甘やかしておいて好きになったらダメって分かってたけど。
ねぇ、でも、気づいたらもう取り返しがつかないくらい好きになってたの。
同じ気持ちでいてくれているんじゃないかって期待して、少しずつ遅くなるLINEの返事も、なんだか気のない返事も、少し冷たい視線も全部全部気づかないふりした。
分かっているよ。
私が悪いんだってこと。
「……ありがとう。とても楽しかったし、色々嬉しかった」
有りがちで陳腐な台詞が私っぽい。
拳ちゃんは少しだけ寂しそうな顔して私を見つめている。
引き止めてほしいって如何にも安いっぽい女の考えなんて、賢いあなたは見透かしているんでしょう。
「うん……A、ありがとう」
もう触れることも、会うことも、声を聞くこともないのだろう。
ただ寂しさを、虚しさを、孤独さを埋めたいだけの恋だったのかもしれないけれど。
唇を噛んで席を立った。
何の未練もなさそうな拳ちゃんが羨ましくて。
好きだなんて言わずに、ただ曖昧な関係を続けていればよかったと後悔したってもう遅いよね。
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作者名:ももりん | 作成日時:2020年5月30日 18時