朝帰り fkr ページ24
朝焼けの中、私たちはなんとも言えない距離を保ちつつ駅に向かう。
数時間前までは裸で抱き合っていたのに、外に出たらもう手すら繋げない。
「福良」
「何?」
都合のいい存在。
後腐れない関係。
福良が私に求めてるのはそういうこと。
だから平気なふりをする。
私だってそうだよって。
欲望を満たすだけの関係を望んでるふり。
「お腹すいちゃった」
「そういえば昨日ろくに食べてないんだっけ」
「福良がコンビニ寄らせてくれないから」
「はは、ごめんって」
透き通るような青空の下で爽やかに笑った福良は狡い男。
朝の澄んだ空気は私には苦しくて窒息してしまいそう。
「牛丼でも食べてく?」
「は?それ男女で行くとこじゃなくない?」
なんて半分は本音なのにわざとらしくふざけて言えばまた福良は笑う。
「まぁ、デートでは行かないよねぇ」
そういう夢すら見させてくれないところが死ぬほど嫌いなのに、それが優しさであることも知ってる。
鋭利な台詞を真っ正面から受け取って、私の胸は泣きたいほど痛くてもうズタズタだ。
なのに、そんな素振りを見せてしまえば次がなくなってしまうとわかっているから笑顔の仮面を被るの。
「付き合ってよ」
「え?」
「牛丼」
「あぁ、うん」
その安心したような顔が、私を傷つけてることは知らないんだろうね。
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作者名:ももりん | 作成日時:2020年5月30日 18時