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偶然 ymmt ページ19

あの日はなんだかのんびり散策でもしたい気分で、思い付きで自宅の最寄り駅から二駅前で降車した。
大きな駅でもないし降りたことはなかったけれど、なんとなくそこから歩いて帰ろうと思った。


改札を出ようとすると、少し向こうにAちゃんが立ってて。
約束もしてないのに、こんなとこで偶然会えるなんて嬉しくなって僕は君を驚かそうとそっと近づいたんだ。


「A、おまたせ」


Aちゃんの視線の先には僕じゃない男がいた。


「ううん、待ってないよ」
「よかった。行こうか」


声をかけることなんて出来なかった。
だってAちゃんがとても嬉しそうな顔してたから。
僕はAちゃんのすぐ斜め後ろにいたのに。
あと数歩で君の横に行ける距離にいたのに。
Aちゃんは目の前の男に夢中で僕になんて気付かない。


繋がれた手はすごく自然で、誰がどう見ても二人はお似合いだ。


でも、Aちゃん。
僕たちは恋人同士だったんじゃないの。


*


「よしくん、どうしたの?」
「あ……ううん、何でもないよ」


いつもと同じ金曜日の夜。
仕事終わりに待ち合せてやって来るのは、もうすっかり馴染んだAちゃんの部屋。
僕の部屋着は一番下の引き出しに入ってて、お揃いのマグカップはいつも流しの上で並んでる。


「ふふ、なんか疲れてる?」
微笑んだAちゃんは今日も可愛くて。

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作者名:ももりん | 作成日時:2020年5月30日 18時

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