ショートヘア ko-chan ページ13
「航平、おはよう」
オフィスに向かう途中の横断歩道で信号待ちをしていると聞き慣れた声に名前を呼ばれて振りむいたが、それが一瞬誰だか分からず脳がフリーズした。
「あ、Aか」
数秒後、やっと同僚のAだと気が付いた。
彼女は昨日まで胸の下まであった長い髪を肩に付かない長さまでバッサリと切っていた。
涼しげなその姿は暑い夏にはぴったりなのにどこか寂しく見える。
「何、失恋でもしたの?」
なんてからかってみる。
Aは目を丸くしたあと小さく笑った。
「そうだよ」
「……え?」
信号が青に変わって、Aは先に行ってしまった。
嘘だろ、冗談だったのに、まさか。
頭の中が真っ白になって、どんどん小さくなって行くAの後ろ姿を追いかけることも出来なくて、追いかけなきゃ、謝らなきゃと一歩踏み出すも信号は赤に変わってしまった。
「Aちゃん、似合ってる!可愛いじゃん」
俺がオフィスに着いたとき、山本さんがショートヘア姿のAを見て可愛い可愛いと褒めちぎっていた。
Aも照れ臭そうに笑っていて、胸が痛む。
「こうちゃんもそう思わない?夏らしいし、すごく可愛いよね」
山本さんにそう振られて俺は苦笑いしか出来なかった。
謝りたいのに、タイミングを逃してしまってこんな反応しか出来ず情けなくなる。
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作者名:ももりん | 作成日時:2020年5月30日 18時